これからの政治のありかた ―リベラル保守を目指して
政治学者の中島岳志東工大教授が政治を考える際の物差しを提案しています。まず所得の配分のあり方として、リスクを社会化するのか個人化するのか、そして価値観としてリベラル(自由)かパターナル(介入)かという二つの物差しです。病気や事故などの人生のリスクを社会全体でみるのか、自己責任だとして個人で背負うのかというのを縦軸にします。政府が個人の生き方や心の問題に介入することを認めるか、LGBTの問題や夫婦別姓などは自由を認めるかという価値観のあり方を横軸に取ります。
自民党で言えば、田中角栄はパターナルでしたが、リスクの社会化に舵を切り社会福祉を充実させました(大きな政府)。大平正芳はリスクの社会化は同じでしたが、幅広い教養に裏打ちされたリベラルな価値観を持つ自由主義者でした。小泉純一郎は、価値観にはまったく興味を示さず、リスクの個人化をすすめるために新自由主義経済を追求します(小さな政府)。安倍晋三は、新自由主義に加えてLGBTや夫婦別姓は認めないパターナルな立場です(「自民党」、スタンドブックス、2019年)。
今の安倍政権の立ち位置が自民党の大勢であり、今後も強くなる一方だと思います。高度成長の夢をもう一度と、個人でリスクを取る社会は生きにくく、弱者にしわ寄せがいきます。人生のリスクは政府に加え、NPOなども含めて社会全体でカバーすべきだと考えます。LGBTや夫婦別姓など人の心の問題や生きざまについて、政府は介入すべきではありません。その上で、エネルギー政策や外交、安全保障は現実的に対応すべきだと思います。何でも反対では無責任ですし、それでは政権はとれません。その意味で、私は大平正芳と同じ政治を目指したいと思います。中島教授は大平政治を「リベラル保守」の政治と呼んでいます。リベラル保守の政治こそ、政権交代のキーワードであり、野党のめざすべき王道です。