再生された「備前堀」と緑道

 前号では「おもてなし」日本一への挑戦と題し、茨城県が進める「いばらき観光マイスター」の制度を取り上げた。県民を挙げて観光都市としての魅力を高める、県内の観光地や特産品を紹介していきたい。
 今週は、前々号で取り上げた千波湖の氾濫対策や、農業用水として使われている備前堀(びぜんぼり)と景観整備された岸辺の緑道を紹介する。
 備前堀(別名、伊奈堀)は水戸市の桜川と涸沼川(ひぬまがわ)を結ぶ用水路。少しの雨でも千波湖が氾濫し、わずかな日照りで干害に見舞われることから、慶長15年(1610)水戸藩初代藩主の徳川頼房が、幕府直轄地を司る代官として設置した「関東代官」の一人、「伊奈備前守忠次(いな・ただつぐ)」に命じて造らせた。
 堀の岸辺では染物屋が並び、染物を洗う光景が見られるなど商工業が反映。農業用水として水田を潤すなど大きな恩恵をもたらしたという。開削を明示された伊奈備前守忠次の名にちなみ、備前堀、伊奈堀と呼ばれるようになった。
 大正10年から昭和7年にかけての干拓事業により千波湖とは切り離され、農地へ水を行うかんがいの時期以外は空堀の状況となり、景観を損ねていたことから、昭和63年から平成13年にかけ護岸の修復と同時に、沿道を魅力ある歴史ロードとして整備。情緒あふれる観光客の回遊場所として生まれ変わった。
 夜には岸辺の沿道がライトアップされるなど、昼と夜で異なる顔を見せてくれる。途中の道明橋には、開削に貢献した伊奈備前守忠次の銅像が建つ。水戸を訪れた際はぜひ訪れてみてほしい。(次田尚弘/水戸市)