高野山奉納の五輪塔 国登録有形民俗文化財に

高野町の圓通寺が所有する「高野山奉納小型木製五輪塔及び関連資料」が、和歌山県内初の国登録有形民俗文化財に登録される見通しとなった。国の文化審議会が15日、文部科学大臣に答申した。日本の霊山信仰や死者供養の様相を考える上で貴重な資料とされる。

国の文化財登録制度は、国と地方公共団体の指定文化財以外のものを対象に、保存・活用のための措置が特に必要とされるものを幅広く登録し、届出制と指導・助言・勧告を基本とする緩やかな保護措置により、所有者の自主的な保護に期待する制度。1996年10月に有形文化財の建造物に導入され、2005年4月に建造物以外にも拡充された。有形民俗文化財はこれまでに全国で45件が登録されている。

「高野山奉納小型木製五輪塔及び関連資料」は、日本を代表する霊山の一つ、高野山に奉納された木製の五輪塔群と、一緒に納められていた神札や護符、祈祷札などからなり、五輪塔は1万2156点、関連資料は156点となっている。

五輪塔群は19年4月、高野山真別所圓通寺本堂の須弥壇(しゅみだん)下から発見された。15点の木箱に収納され、木箱の墨書などから江戸時代後期の製作と推定される。

五輪塔は仏教教理に基づく供養塔で、仏教的宇宙を構成するものとされる。奉納された五輪塔は、大きさが10㌢ほど、塔の底部には奉納者の名前や地域の他、奉納の目的などが記されている。塔の内部に、経文などの納入品が籠(こ)められているものもある。

関連資料からは、奉納された当時の信仰的な背景を知ることができる。

五輪塔の底部に奉納者などの銘文があり、資料としての価値が高いことに加え、奉納者は全国に及び、高野山の僧侶の広範な活動をうかがうこともできる。日本における霊山信仰や死者供養の様相を考える上で注目される資料として、高く評価されている。

 

「高野山奉納小型木製五輪塔及び関連資料」の全体(県教育委員会提供)

 

五輪塔と内部の納入品(県教育委員会提供)