旬を迎える春柑橘「不知火」

2月も今日が最終日。少しずつではあるが春が近づいているように感じる今日この頃である。スーパーなどでは店頭に形や大きさがさまざまな柑橘(かんきつ)がたくさん並ぶようになってきた。個性のある品種が顔をそろえるこのシーズン。県内で収穫される数々の「春柑橘」を紹介していきたい。
まずは「不知火(しらぬい)」。ポッコリと膨らんだヘタと、丸みのある大きなシルエットが特徴。「清美」と「ポンカン」を掛け合わせてできた品種で、糖度が高いうえに果汁も多く、手で剥きやすい。中の薄皮(じょうのう)ごと食べられるので、小さな子どもでも食べやすく、筆者の甥(3歳)の好物である。
果実の重さは250㌘程度で、温州みかん(80㌘程度)3個分に相当し大きめ。酸味を抜くため収穫後1~3週間程度貯蔵してから出荷されるという。産地のトップは熊本県で約1万2千㌧(農水省統計、2017年)。次いで愛媛県(約9千7百㌧)、第3位に和歌山県がランクインし約5千2百㌧で、全国シェアの約12%となる。
誕生は1972年。長崎県南島原市の果樹試験場で作られ、甘夏の産地として知られる熊本県宇城市(旧・不知火町)で栽培が始まった。それ故に、果実の名が不知火という。以降、九州各地で広まり、やがて柑橘の産地である愛媛や和歌山、広島、静岡などに広がった。
現在はアメリカのカリフォルニア州でも栽培され、ヘタの出っ張りが力士の髷(まげ)に似ていることから「スモウマンダリン」の名が付けられている。
不知火と瓜二つの柑橘として知られる「デコポン」。不知火との違いは次週紹介したい。
(次田尚弘/和歌山市)