16年ぶり県タイ記録 走り幅跳び山本晴海君
和歌山市毛見の紀三井寺公園陸上競技場で開かれた和歌山陸上競技協会の記録会で、和歌山陸上クラブ所属の山本晴海君(12)が、小学6年男子の部、走り幅跳びで5㍍66を記録し、16年ぶりに県タイ記録をマークした。腰椎分離症の診断を受け、痛みを抱えながらの跳躍。記録更新への手応えは大きかったといい、山本君は「新記録を出せなかったのは悔しいけど、次は中学生の日本新記録を目指したい」と意気込んでいる。
5歳上の兄に付き添って同クラブを訪れたのをきっかけに、6歳から陸上競技を始めた山本君は、かつて高跳びや三段跳びをしていた父、典史さん(48)の影響で走り幅跳びを始めた。小学3年生の時に初めて出場した大会では2㍍84だった記録が、4年生の秋には4㍍19に伸びた。
4~6年生の3年間は、国際舞台で活躍できるトップアスリートを育てる県のゴールデンキッズにも選ばれ、心身ともに鍛えながら記録を伸ばし、自己ベストは5㍍16に達した。
ことし2月ごろからは特に調子が良く、小学生の日本新記録を目指して練習に打ち込んでいたが、時折腰に痛みを感じる状態が続いたため、今大会の5日前に病院を受診したところ、腰椎分離症と診断されたという。
成長期のスポーツ選手に多く見られる同症は、疲労骨折が主な原因とされ、コルセットなどで保護し、安静を保つ必要がある。医師から記録会への参加を止められたが、山本君の「日本新記録を狙って、どうしても最後に出たい」という強い思いが、この日の県のタイ記録につながった。
当日は、典史さんのアドバイスもあり、疲れが出ない1本目に勝負を懸けた。狙い通り、1本目で16年ぶりの県タイ記録が出たが、山本君は「記録を超せず、タイになって悔しかった」と振り返る。2本目はファウル、3本目は5㍍46で自己ベストは更新したものの、「腰をけがしていなかったら超せていたと思う」と悔やむ。
悔しさをばねに、日本新記録への思いを強めた山本君は、「小学生の日本記録に8㌢足りなかったので、今度は中学生の日本記録(7㍍39)を8㌢超す記録を出したい」と前を向く。ただし、目標を達成するためには、まずは症状の克服が先決。
日本新記録の樹立を目指す山本君にとって、今後は部活だけでなく、体育など一切の運動ができないつらい日々となる。復帰は早くても1年後といい、「いつまで安静といった期間も分からずつらいけれど、中学生になったらいろんな大会で優勝したい」と前向きに捉えている。
走り幅跳びの魅力は「飛んだときのフワッと上がる感覚や、高く飛べたときの達成感」といい、「目標はオリンピック」と笑顔。
同クラブの創立者で、指導する山本宜史代表(72)は「おとなしくて真面目で、練習もやり過ぎかなというくらい頑張っている」と評価し、「身長168㌢と、体も大きくスピードもあるので、最低でも全国大会出場を」と大きな可能性に期待を寄せている。