すさみ町が「スーパーシティ特区」に名乗り 人口3800人の町の大きな挑戦

昨年9月に施行された改正国家戦略特区法に基づき、政府が選定する「スーパーシティ特区」の募集が先日締め切られ、全国31の地方公共団体から応募がありました。人工知能(AI)やビッグデータに代表される最先端テクノロジーを活用し社会基盤の整備を行うとともに大胆な規制改革を実施し、世界に先駆けた新たな未来都市を創造するという政府の狙いに、和歌山県では唯一、県と共同ですさみ町が「南紀熊野スーパーシティ構想」として名乗りをあげました。
昨年来、岩田勉町長を先頭に、南紀白浜エアポート株式会社をはじめ、多くの民間の連携事業者が集結し、当地の地域課題と未来の街づくりの在り方について、熱心な議論を重ねられています。
すさみ町は人口3800人で高齢化率47%を超え、現在も年間約100人の人口減少に悩まされています。少子化により学校は統廃合が進み、進学等による若者の流出に歯止めはかかりません。加えて、南海トラフの地震・津波対策は喫緊の課題として地域に大きくのしかかっています。
一方で、南紀熊野ジオパークや熊野古道といった豊富な観光資源に恵まれ、関西圏マーケットだけではなく、南紀白浜空港を活用すれば約70分で首都圏にアクセスできる交通環境にあります。近年、高速道路の開通に伴い、さらにアクセスは向上し、コロナ禍で浸透しつつある新しい働き方「ワーケーション」の先進地として、急速に注目度が高まっています。
先日、岩田町長にお会いした際、町長は「小さい町だが、生まれ育った故郷の町をこのままにしてはおけない。しかし、故郷を愛する気持ちと住民同士のつながりの強さと団結力はどこの自治体にも負けないつもりである」と熱く思いを語ってくださいました。私は、そのお話をうかがいながら、もはや今回のすさみ町の挑戦は一つの自治体の問題ではなく、全国の同じように人口減少と高齢化に悩む自治体を代表する挑戦になると強く感じました。そのような取り組みが和歌山県から発信されたことは極めて意義深いことと感謝を申し上げたいと思います。
すさみ町は応募自治体の規模でも最小規模であることは間違いありません。それだけで、他の自治体との競争において不利ではないかという声もあるようですが、私は政府に対し、地方の切実な声にどこまで耳を傾けるかの問いかけであると考えています。
民間事業者の力も借りながら、住んで良し、訪れて良しの故郷を次の世代に引き継ぐ思いが何より重要です。小さな町の大きな一石、すさみ町の勇気ある挑戦に私たちも協力してまいりたいと思います。