IR事業者にクレアベスト 県と整備計画提出へ
和歌山県は2日、和歌山マリーナシティ(和歌山市毛見)に設置を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)事業の優先権者候補に、クレアベスト・グループ(カナダ)を選定した。正式に優先権者に決定後、県と同社が共同で区域整備計画を作成し、来年4月28日までに国に申請する。仁坂吉伸知事は「和歌山にかなり大きな成長因子が加わる。育てていくのは次の世代のための使命だ」と、改めて誘致の意義を述べた。
県のIR事業者公募には当初、同社とサンシティグループ(マカオ)の2社が応募。ことし1月から4月に有識者による選定委員会(委員長=谷口博昭・建設業技術者センター理事長、9人)で両社の提案を審査したが、5月12日にサンシティが撤退し、1社のみとなったクレアベストへの評価が注目されていた。
クレアベストの提案は、「『木の国・水の国』自然豊かな滞在・体験型IR」を掲げ、全体の延べ床面積は約56・9万平方㍍。このうち約3・8万平方㍍がカジノ施設となり、約6000人収容の国際会議場、約6万平方㍍の展示場スペース、約2700室の宿泊施設、日本遺産ミュージアムをはじめとする魅力増進施設などを設けるとしている。
約4700億円を初期投資し、開業後4年目の試算で、経済波及効果約2600億円、雇用創出約1・4万人、目標来訪者数約1300万人(うち外国人約300万人)、県納付金約230億円、県入場料約120億円となっている。
優先権者候補の発表に合わせて公表された選定委の審査講評では、1000点満点の評価点でクレアベストは合計656点と、サンシティの720点を下回ったが、回遊性や緑化に配慮した施設配置やギャンブル依存症対策、セキュリティー体制などでサンシティよりも高い評価を受けた。
県は選定委の審査以前から、カジノ事業の免許基準を踏まえた事業者の適格性についての予備調査も進め、問題がないと判断した。
仁坂知事は「自信を持って次のステップにいける。今からさらに(計画を)良くしていきたい。国土交通大臣に認可をいただけると期待している」と改めて誘致に自信を示した。
今後は、市、県公安委員会との協議を経て正式に優先権者に決定した後、クレアベストと県が共同で区域整備計画を作成する。県は、計画を向上させるため、提案内容の変更、実施体制を強化するためのコンソーシアム(共同事業体)構成員の追加、資金調達の確実性を担保するための融資確約書の提出などを求めることにしている。
開業予定時期は、26年春ごろとする県の方針に対し、クレアベストの提案は27年秋ごろとなっている。仁坂知事は「早い方がいい」と述べ、事業者と相談することはあり得るとしたが、事業の確実性を重視する考えを示している。
同社はカナダ・トロントを本拠地とするIR投資会社で、北米を中心にチリ、インド、イギリスなどでカジノ業界に投資している。
優先権者候補への選定を受け、同社の日本法人、クレアベストニームベンチャーズ㈱のロベール・ヴェルディエ代表は「美しい自然と豊かな文化に恵まれた和歌山の地にふさわしいIRを実現すべく、努力していく」とのコメントを発表し、近く県内に事務所を開設することも明らかにした。
和歌山市長コメント
優先権者候補の選定を受け、尾花正啓市長は「和歌山IR実現に向けて一歩前進したものと考えている。区域整備計画が市にとって最善の計画となるよう、県と密に連携しながら取り組んでいく」とコメントした。