これからが旬「バレンシアオレンジ」
前号では、甘味と酸味の絶妙なバランスが魅力的な「甘夏ゼリー」の作り方を取り上げた。
6月も中盤を過ぎ、店頭に並ぶ春柑橘(かんきつ)の姿はわずかとなったが、これから夏にかけて旬を迎える柑橘がある。今週は「バレンシアオレンジ」を紹介したい。
バレンシアオレンジの原産地はアメリアのカルフォルニア州。その名はスペインのバレンシア地方に由来するが、元々この地方で栽培されていた柑橘と姿が似ていたことから、その名が付いたのだという。
特徴は開花から収穫まで400日もの期間を要すること。一般的な柑橘は200日前後であるため、栽培にかかる期間はその倍。収穫間近の果実と開花後間もない果実が同じ木に共存する、珍しい品種である。
重さは200㌘程度で温州みかんより少し大きなサイズ。青みがかった表皮から、熟す前に収穫されたのではないかと思われがちだが、回青現象という春の時期に葉緑素を取り込むことで起きるもの。収穫前に青くなるという不思議な柑橘である。
味は甘味と香りが強く酸味は少なめ。皮が硬くむきづらいため、食べやすいよう、くし切りにするのがお勧め。
バレンシアオレンジのほとんどは海外からの輸入で国産はごくわずか。2018年度産特産果樹生産動態等調査によると国内の主な産地は和歌山県のみで収穫量は約240㌧。県内の主要産地は湯浅町、田辺市、広川町となっている。
輸入品には輸送機関の長さから防腐剤が添加されることが多いが、国産品にはその心配がないのがうれしいところ。希少性が高い国産バレンシアオレンジ。冷やして食べてもおいしい、この時期ならではの柑橘をぜひ。(次田尚弘/和歌山市)