パンダの子育て 白浜AWの熊川さん講演
和歌山県精神保健福祉協会が主催する講演会が21日、和歌山市手平の和歌山ビッグ愛で開かれた。白浜町のアドベンチャーワールド(AW)でジャイアントパンダ繁殖プロジェクトメンバーとして、パンダの出産や子育てを間近で見守ってきた㈱アワーズのマリン課セクションマネージャー、熊川智子さん(48)が「未来につながるジャイアントパンダの子育て」をテーマに講演した。
県民の心の健康増進を目的に、同協会が年に1度主開く講演会で、「令和3年度こころの集い」として実施。
熊川さんは、中国を除き世界で最もパンダの繁殖に成功している同園の大きな要因として、人工授精することなく自然交配で2年に1度繁殖を続けるジャイアントパンダの雄、永明(えいめい)のおかげだと紹介。28歳の永明は、人間でいうと80歳を超える高齢で、今後は老齢個体の飼育研究に力を入れていきたいとの展望も明かした。
パンダの雄は子育てに一切関わらないため、出産はもちろん、子育ては雌の仕事とし、2008年に初産を迎えた良浜(らうひん)が出産の経験を重ねながら母として成長していく実際の姿を動画で紹介。同園では母親パンダが赤ちゃんを育てることを最優先するとともに、子育てしやすい環境づくりを徹底していると説明した他、昨年誕生した赤ちゃんパンダ、楓浜(ふうひん)の誕生から現在までの成長を収めた動画も公開された。
講演後の質疑応答では、「楓浜」の命名者の一人、和歌山市の木村真季さん(42)が「楓ちゃんが大きくなって中国に帰ってしまうのが寂しい」などと伝えると、熊川さんはこれまで中国に戻った11頭について、自身が「パンダパラダイス」と呼ぶ広大な敷地で伴侶に巡り合って子育てする姿を見て「幸せを感じる」と話し、「いつかアドベンチャーワールドで繁殖してきた浜家のパンダが野生に帰る日が来るかもしれない」と期待した。
熊川さんによると、2019年の野生のジャイアントパンダは約1864頭。2005年から2016年までに野生に帰ったパンダは8頭といい、同園は今後も中国と共同研究を続けながら、パンダを野生に帰す活動を続けていくという。