150年の歴史を持つ「八朔」
前号では、国内唯一の産地として希少性が高く、これから旬を迎える「バレンシアオレンジ」を取り上げた。春柑橘(かんきつ)のほとんどは旬を終える季節となったが、生産量が多く県を代表するものやユニークな品種を紹介していきたい。
まず紹介したいのが「八朔(はっさく)」。古くから親しまれる春柑橘で、旬は1月~4月ごろ。2017年の農水省統計によると、和歌山県における八朔の収穫量は約2万5千㌧で全国1位。シェアの7割以上を占める一大産地となっている。
八朔は1860年ごろ、広島県尾道市の因島で発見された品種。自生していた寺の住職が「八朔の頃には食べられるだろう」と言ったことからその名が付いたという。八朔とは八月の朔日(さくじつ)を指し、朔日とは1日の意味で、旧暦の8月1日にあたる。実際の旬とはかなり離れているがその名が定着。その名が広く知られるようになった。
果実の重さは400㌘ほどで大型。皮は厚くてむきづらく、じょうのう(中袋)も厚い。酸味が強いことからほろ苦く、果汁が少ないことからパリッとした食感が特徴。苦み成分であるナリンギンやリモニンを含み、加熱すると苦みが増すことから加工品としては不向きとされる。
県内では主に紀の川市や有田川町で生産され、苦みを抑えた「さつき八朔」という品種も登場している。
古くから親しまれる八朔であるが、1980年ごろの収穫量約20万㌧をピークに現在は約3万㌧まで数を減らしている。他の春柑橘の台頭で致し方ないところであるが、品種の特徴を生かした味わい方で、いつまでも和歌山の特産品として残していきたいものである。(次田尚弘/和歌山市)