出会いに感謝 がんサバイバー夫婦が展示
昨年夫婦で共にがんサバイバー(がん経験者)となった和歌山市の芝田達也さん(67)・浩子さん(61)の闘病の軌跡や大好きな旅での思い出、夫婦を表現したアーティスト作品を展示する「旅するサバイバー展」が11日まで、和歌山市築港のカフェギャラリー「器とカフェと…扉」で開かれている。
夫・達也さんは2020年2月に腎盂(じんう)がん、妻・浩子さんは同年5月に乳がんが発覚。その後、達也さんは左腎臓と尿管、浩子さんは右乳房を全摘出する手術を受けた。
展示のきっかけとなったのは、写真が趣味の次男・厚作さん(28)が撮った笑顔の夫婦写真。浩子さんの右乳房の摘出前と後の姿を収めたもの。浩子さんは「息子だからリラックスして撮影できた」と話し「この写真をどこかで発表できたらな」と今展を企画。撮影時、笑顔で臨む夫婦の姿をファインダー越しに見ていた厚作さんの目には涙があふれていたという。
会場には、がんについて考えるきっかけになればと、発覚から術後の現在に至るまでの2人の治療や経緯を克明にまとめた資料や表、浩子さんの胸の姿を残した絵画やトルソーが並ぶ。
他にも、旅好きの夫婦が愛車のキャンピングカー「ジル号」で日本全国を巡り、出会った人々と撮った笑顔の写真やその土地の思い出の品、アーティストたちが夫婦をモデルにした似顔絵、人形など「人とのつながり、出会いに支えられてきた」と話す夫婦の思いが詰まった展示となっている。
5年ほど前から夫婦と親交のある紀の川市の徳野いづみさん(63)は、笑顔の夫婦写真に「言葉が出ない」と声を震わせ「母も乳がんだった。がんと闘っている人に勇気を与える展示」と話していた。
達也さんは「たとえがんになったとしても落ち込まず、展示を見てこういう生き方もあるのかと、少しでも楽しみを見つけて進んでいってもらえるきっかけになれば」と笑顔。浩子さんは「がんになったからこそ発信できることもある。病気になったから終わりではない。私たちの楽しみは旅。これからもいろいろな人に出会いに行く」とほほ笑んでいた。
午前11時から午後4時(9日のみ午後10時)まで。芝田さん夫婦は全日程、在廊予定。
問い合わせは同ギャラリー(℡090・3706・5471)。