思いやりの心大切に たかだゆき子さん絵本

和歌山市文化奨励賞を昨年受けた同市の児童文学作家、たかだゆき子さん(25)が、4作目となる絵本『おもいやりのこころ』を出版した。テーマにするのは、これまで発表した絵本でも、常に根底にあった「思いやり」の大切さ。SNSなどで個人を標的とした誹謗(ひぼう)中傷が後を絶たない中で「誰もが本来優しさの種を持っているはずで、その育て方や咲かせ方が重要。それぞれの心に、きれいな思いやりの花を咲かせてほしい」とメッセージを送る。

たかださんは生まれた時から肢体が不自由で、車いすを使って行動。作家活動の傍ら、絵本の読み聞かせをする「ゆっこりんのおはなし会」を立ち上げ、双子の兄の英樹さんらと共に、手遊びなどを交えて子どもたちの豊かな心を育み、楽しい時間を届ける活動をしている。

今作は、うさぎちゃんと、3匹のおさるさんを中心とした物語。愛情を込めて庭の花を育てるうさぎちゃんに対し、嫉妬したおさるさんたちが花を荒らしてしまう。さらに、助けに入る仲間をそそのかそうとしたり、悪さをしようとしたり。しかし、相手を思いやるうさぎちゃんの姿に、おさるさんたちも次第に優しい心を取り戻していく。

表情豊かな動物たちの絵は、今回も姉のさめじまゆみ子さん(27)が担当。誰もが心に「思いやりの種」を持ち、それを芽ぶかせ、花を咲かせることができるというメッセージを込めた。

コロナ禍では人を思いやる大切さや命の尊さをあらためて感じる機会が多く、SNSなどで飛び交う心ない言葉に胸を痛めることもあったという。たかださんは「他人を悪く言うことで、自分が輝くことはできないと思うんです」ときっぱり。苦労は目には見えづらいこと、そして、隠れた努力をきちんと理解してくれる人も必ずいることなど、自身の体験から得た思いを絵本に託す。

絵本に登場する傷んだ花もそうであるように、一度傷ついた心が元通りになるには時間がかかる。「心の傷が癒えることもあれば、そうでないことも。ちょっとしたひとことも相手の心に深い傷となるかもしれず、言葉の重みを感じてほしい」と話している。

1650円。宮脇書店和歌山店、ツタヤウェイガーデンパーク和歌山店などで販売している。

絵本を手に、たかだゆき子さん

絵本を手に、たかだゆき子さん