冷泉家が和歌披講 聖地・和歌の浦玉津島神社で
和歌三神の一つに数えられる衣通姫(そとおりひめ)をまつる和歌山市和歌浦中の玉津島神社で7日、和歌の宗家である京都の冷泉家(れいぜいけ)が、和歌に節をつけて朗詠する和歌披講を披露した。和歌の浦や和歌に関する講演もあり、集まった約60人は古来から景勝地として、また和歌を志す人の憧れの地として多くの崇敬を集めてきた和歌の浦・玉津島への理解を深め、いにしえの歌人に思いをはせた。
「紀の国わかやま文化祭2021」(国民文化祭、全国障害者芸術・文化祭)の事業「和歌の聖地 和歌の浦魅力探訪」の一環として開催。
冷泉家は平安、鎌倉時代に「歌聖」と仰がれた藤原俊成、定家父子を祖先に持つ「和歌の家」。800年の歴史を持ち、冷泉流歌道を継承する。
披露された和歌は、冷泉家がこれまで同神社に奉納してきた中から、秋を題材に詠んだ5首を厳選。「里遠み分け行く野辺の初尾花暮なば今宵手枕にせん」(冷泉為綱)、「名草山ふもとの浜の夕波も声うち添ふる入相の鐘」(冷泉為久)などを朗詠した。
和歌披講を前に、「紀の国わかやま文化祭」の和歌山市実行委員会会長の尾花正啓市長が「和歌の神様をまつる聖地・玉津島神社で冷泉家による和歌披講が行われることはありがたく、和歌山市にとってもうれしいこと。コロナ禍で伝統的な催しが中止になっているが、しっかりと地域の文化を守り振興していきたい」とあいさつ。
冷泉家24代為任の長女で、25代当主夫人の冷泉貴実子さんは「玉津島は私どもにとって憧れの神社。そのお社の前で披講させていただくことを大変喜ばしく思っています」と話し、5首を丁寧に解説した。
華やかな狩衣や袿袴(けいこ)姿の当主冷泉為人さんら、公益財団法人冷泉家時雨亭文庫の5人が出演。三十六歌仙額が掲げられた拝殿で、ゆったりとした伝統の節と旋律で和歌を詠唱すると、雅やかな雰囲気に包まれた。
同市の女性(71)は「古典の世界にいざなわれるようで、昔はああいうふうに歌を詠んでいたのかと感動。講演の内容も大変興味深く、和歌の浦の価値を再認識しました」と話していた。