クマと人の物語 童話作家の太田さん初絵本
和歌山市中之島の童話作家、太田甲子太郎(かしたろう)さん(73)が、クマと猟師の交流を描いた初の絵本『クマのろくた』をみらいパブリッシングから出版した。文・絵全てを手掛けた太田さんは「悲しい物語だけれど、これほど感動のある絵本はない」と話している。
太田さんは25歳の時から民話の収集を始め、和歌山を舞台にした短編小説集『人魚の恋愛』(2008年)、県内の民話・説話を収集した『紀州に伝わる民話』(2010年)などを出版。
今回は、絵本という新しいジャンルに挑戦しようと、4年前から構想し2年前に制作に取り掛かった。
主人公クマの「ろくた」と育て親の与重の心温まるエピソードから、「人」対「クマ」の悲しい「不条理さ」を描く。人を引き付けるような味わい深い絵に、雪が降る情景を「さらんさらん」、「しんしら しんしら」、悲しみに暮れる泣き声を「おえん おええん」と表現するなど、太田さんが生み出した独自のオノマトペが読み手の想像力をかき立てる。
太田さんは「ラストシーンの絵は特に力を入れ、納得がいくまで何度も書き直した」と話し「全て自分で仕上げ生み出した子どものような存在。大人が読んでも感動する作品で、ぜひ子どもにも読み聞かせてあげてほしい」と笑顔。次回作の構想もすでに頭の中にあると意気込んでいる。
太田さんは母校の市立中之島小学校などに同絵本を寄贈。多くの子どもたちに読んでもらいたいと願っている。
A5判横オールカラー、32㌻、1430円。同絵本はインターネット通販のアマゾン、楽天ブックスなどの他、ぶらくり丁の番茶屋、本町のカフェ ル・ポンなどでも取り扱っている。