久保田さんら受賞 21年度県文化表彰に6人

和歌山県の文化向上、発展に貢献した人や将来の活躍が見込まれる人に贈られる2021年度県文化表彰の受賞者が決まった。「文化賞」は有田川町出身の航空宇宙工学者・久保田弘敏さん(80)=東京都=、「文化功労賞」は声楽家の多田佳世子さん(82)=和歌山市=、紀の川市出身の国文学者・半田美永さん(74)=三重県=の2人、「文化奨励賞」は現代美術家の伊藤彩さん(34)=有田市=、能楽師の松井俊介さん(43)=和歌山市=、和歌山市出身のデザインエンジニア・吉本英樹さん(36)=神奈川県=の3人に贈られる。

1964年度から続く表彰で、本年度が58回目。表彰式は16日に県庁正庁で行われ、受賞者には表彰状と徽章(きしょう=メダル)、副賞が贈られる。

受賞者の主な経歴と功績は次の通り。

【久保田弘敏さん】有田郡藤並村(現有田川町)生まれ、東京大学大学院航空学専攻博士課程を修了。アメリカ航空宇宙局(NASA)客員研究員などを経て、東大、帝京大などで航空宇宙工学分野の研究と学生の育成に尽力。日本航空宇宙学会会長や国際会議委員などを歴任し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)発足に寄与するなど、日本の科学技術発展や産業振興への功績は枚挙に暇がない。

【多田佳世子さん】武蔵野音楽大学短期大学部声楽科卒業。県立高校の音楽教員を務めながら、1964年に和歌山市民オペラ協会の前身、和歌山声楽研究会を設立。代表として、出演の他、企画・演出、若手の指導に尽力し、国内外の著名なアーティストを招くなど、本格的なオペラ文化を和歌山に根付かせるための活動を50年以上にわたり続けている。

【半田美永さん】智弁学園和歌山中学・高校教員を経て、皇學館大学文学部教授などを歴任し、現在は名誉教授。「佐藤春夫研究」により文学博士号を取得。紀伊半島をめぐる作家や作品に着目した調査研究に長年にわたり取り組む。文学分野の熊野学の先駆けとして県の文化振興に大きく寄与し、国際熊野学会の副代表として後進の指導にも貢献している。

【伊藤彩さん】京都市立芸術大学大学院絵画専攻油画を修了。「フォト・ドローイング」という独自の画面構成方法で制作し、大学卒業時の作品がアートアワードトーキョー丸の内2009で準グランプリを受賞するなど高い評価を受け、今後一層の活躍が期待されている。

【松井俊介さん】喜多流能楽師の彬氏を父に持ち、3歳で初舞台を踏み、6歳から能の「仕舞」を習う。プロの能楽師として日本のみならず、アルゼンチン、フィンランドなど海外各地でも公演し、日本の伝統芸能である能の魅力や奥深い芸術性を国際的に発信している。

【吉本英樹さん】東京大学大学院工学航空宇宙工学専攻修士課程、英国王立芸術学院博士課程を修了。工学とデザインの両面を追求する視座から作品を制作しており、国際的に高い評価を得ている。ロンドンで創業した会社には世界有数のブランドからの依頼が相次いでいる。

 

(写真は県提供)