着物文化を残したい 洋服感覚の商品開発
着物を気軽に楽しんでもらおうと、和歌山市西布経丁のべにや呉服店の五代目若女将、旭真友梨さん(37)が、トップス、ロングスカート、着物と三通りの着方を楽しめる新しい衣「NOI(ノイ)」を開発した。出産を間近に控える旭さんは「着物が生活の中にあった時代を取り戻し、この子の時代にも着物文化を残していきたい」と願っている。
NOIは〝着物っぽく着られる〟洋服で、トップスとして洋服の上に羽織ったり、着物として着用したりと、上下別々で着回しができる。着付けが難しい着物とは違い、トップスには取り外し可能なボタンとひもが付いており、スカートはウエスト部分が総ゴムになっているため、襦袢(じゅばん)と帯さえ用意すれば一人でも簡単に着物のように着用できる。
開発からデザイン、制作まで全てをメイドイン和歌山にこだわり、素材には軽くて伸縮性に優れた和歌山のメリヤスを使用。メリヤス素材で柔らかく楽な着心地を体感できる他、洋服と同じように洗濯や保管が自宅で簡単にできる。
創業145年を誇る同店に生まれた旭さんは、「祖母の匂いが着物の匂いというほど生活の中に着物があった」というが、小学校の頃には「いずれ終わりが来るんやろなという焦りだけはあった」と振り返る。その予想通り、着物は「普段着られない」「着付けが難しい」「高価」「手入れが大変」などの理由から、現在は全盛期の2割ほどの消費にまで減少しているという。
呉服業界で変化を目の当たりにしてきた旭さんは、着物を着る人口が減った一つの要因に、「着物はいざというときにきちんと着るもの」という概念が構築されたことを挙げる。
かつて日本人全員が毎日着ていて身近な存在だった着物の可能性の裾野を広げようと、現在の生活様式に合ったNOIを開発。16日までCF(クラウドファンディング)でサポーターを募集している。
CFではすでに目標金額の50万円を超え、「こんなん待ってた」と喜びの声や「サイズ展開の幅を増やしてほしい」などの意見が日本全国から集まっている。旭さんは、「お客さまと一緒に育てていってもらいながら、着物を残すという文化活動として広めていきたい」と意気込んでいる。
17日からはNOIのホームページ(https://noi-japan.jp/)でも購入できる。3万8500円。色はネイビー、ラベンダーグレー、グレーの3色。サイズはMかL。CFでは特別セットや特別価格もある。詳細はクラウドファンディングサイト「Makuake」(https://www.makuake.com/project/noi/)で確認できる。
問い合わせは同店(℡090・6201・3401)。