和歌山城の桜再生へ 県造園協が50周年事業

和歌山県内屈指の花見の名所、和歌山城公園(和歌山市)の桜の木々が弱っており、市と県造園建設業協会(吉本忠生会長)が治療に乗り出すことになった。両者は15日、「和歌山城公園の桜再生に関する協定」を締結。造園の専門家が集まる同協会が22日から桜の枝切りや肥料の投与などの作業を開始し、来年夏にかけて樹勢回復に向けた取り組みを進める。

同公園には昭和40~50年代に植えられたソメイヨシノを中心に約600本の桜がある。市は2013年の調査で樹勢の衰えを把握し、剪定(せんてい)などの日常的な手入れは続けてきたが、抜本的な手立てには至っていなかった。

同協会は、1973年10月の設立から半世紀の節目が近づいているのを機に、県民、市民に貢献する50周年記念事業として、桜の樹勢回復の取り組みを市に申し出た。

樹勢の衰えの原因は、樹齢が老木の域に達してきていることの他、それぞれの木が大きく成長したことで共存が難しい状況が生まれていることなどが考えられるという。

協定に基づいて再生を目指すのは、公園内北東の一の橋を渡った大手門から南東の岡口門にかけて続く約240本の桜並木。石垣などに沿って特に桜が集中している場所で、花見スポットとして人気が高い。

同協会相談役で樹木医の山本聰洋(としひろ)さんによると、公園内の桜の状態は「非常に悪い」。幹の内部が腐り、菌類の繁殖がみられる木もあるという。

22日に始まる作業では、木が花を咲かせるためにエネルギーを使い過ぎないようにし、力を蓄えるのを助けるための枝切りを行い、根元に肥料を与える他、倒れる危険がある木は伐採する場合もあるとしている。

協定の締結式は15日、市役所市長室で行われ、吉本会長と尾花正啓市長が協定書に署名した。

吉本会長は「樹木は1、2年で簡単に状態が良くなるというようなものではないが、協会の50周年を機に少しでも県民、市民に還元できるよう、和歌山城の桜を再生していきたい」と話し、尾花市長は「多くの市民が見に訪れる桜に元気がなくなっているが、素人では再生は難しい。協力していただけるのは大変うれしい」と感謝した。

協定書を手にする吉本会長(左から3人目)、尾花市長(同4人目)と県造園建設業協会の皆さん

協定書を手にする吉本会長(左から3人目)、尾花市長(同4人目)と県造園建設業協会の皆さん