和歌山で夢実現を 起業支援の岡京子さん

都会から新天地を求めて地方で起業を目指す「Iターン起業」が和歌山でも増えている。思いはあっても「何から始めたら良いか分からない」と一歩を踏み出せない人も多いはず。そんなとき、背中を押してくれる頼もしい女性が和歌山市にいる。本町のフォルテワジマ6階の公益財団法人わかやま産業振興財団で起業支援事業を担当する岡京子さん(56)は「和歌山には創業に要する経費の一部を補助金で支援する制度が整っている。これから県内で創業を目指す人には、ぜひ利用してもらいたい」と話している。

ロンドンで編集者をしていた岡さんは、父の死をきっかけに帰国。母と二人三脚で父が創業した岡会計センターを継承し、中小企業を支援してきた。

2014年には中小企業庁の「地域創業促進支援事業」に採択され、事業計画の立て方やマーケティングの手法など創業の基礎を学ぶ「わかやま創業スクール」を開講。中小企業の廃業が多くなる中、廃業率より創業率を上回るようにしたいと中小企業庁の委託事業として、全国300カ所(当時)のうち和歌山では唯一の実施団体として選ばれた。また、15年には、受講者満足度の高い創業スクール10選に入った。

これまで、東京からの移住者ら約110人が受講し、約3割の起業家を輩出することに成功。「起業の母」と岡さんを頼りにする人も多い。

スクールでは、講義だけでなくグループワークも実施。受講後も集まって自主的に勉強会を開く人もいるという。

新型コロナウイルスがまん延し始めた20年からは同財団に拠点を移し、「わかやま地域課題解決型起業支援補助金」の応募希望者に対して、事業計画書の指南や、書類審査、プレゼンテーションのアドバイスも行っている。

採択されると、経費に対して補助率2分の1相当の金額を最大200万円まで受けられる。さらに、県外からの移住者の場合、対象者によっては最大400万円を受け取ることができる。県外からの県内移住者には、経費に対し補助率4分の1相当の金額が上限100万円、東京23区から県内に移住した世帯には100万円、単身には60万円が補助されるなど手厚い。

21年度からは、ソサイエティ5・0に関連する、食品ロス対策や温室効果ガス抑制、業務のデジタル化を推進する事業承継や第二創業者に応募資格が拡充された。

岡さんによると、補助金の審査に通るこつは「失敗を考えるより、野心が大事」だという。収益化のビジョンを明らかにすることは必要だが、「何より創業者の和歌山に対する情熱が、審査員のハートを動かす」といい、これから創業される人に向けては「東京に行けば夢はかなうと考えていたように、和歌山だからこそ実現できる夢を見つけてもらいたい」と話した。

起業をサポートする岡さん

起業をサポートする岡さん