つり材腐食が落橋要因 六十谷水管橋調査委
和歌山市の六十谷水管橋崩落に関する専門家による第3回調査委員会が20日、中央コミュニティセンターで開かれた。市企業局は落橋部分の調査や構造解析の結果を公表し、崩落の最大の要因は、上部のアーチと下部の水道管を縦につないで支える「つり材」の腐食と結論した。今後、腐食の把握漏れなどが起こらないよう、点検項目を細分化するなどした維持管理マニュアルも作成した。
調査委の開催は2月1日以来。座長の鍬田泰子・神戸大学大学院工学研究科准教授ら4人の委員が出席し、市側は民間委託などしていた調査結果を示した。
落橋部分のつり材は18本のうち9本が破断し、いずれも外面が激しく腐食。市が構造解析で推測したメカニズムでは、つり材やブレス(筋交い)材の腐食による破断が直接的な要因となって水管橋全体が大きく変形し、アーチや水道管の歪みや破断を招き、崩落に至った。
腐食の要因は、風対策の補強部材の接続部など凹凸がある箇所で局所的に塗装の劣化が進み、水や鳥のふんなどがたまりやすく、さびの発生が促進されたことなどを挙げ、凹凸をなくすことが腐食を防ぐ重要なポイントと指摘した。
分析結果を受け市は、腐食対策の塗装の実施や更新、点検作業は従来から行っていたものの、腐食による破損の想定、つり材の重要性の認識、部材の特徴に応じた腐食箇所の適切な点検方法などが十分でなかったと問題点をまとめた。
水管橋の本復旧工事は、七つのアーチのうち崩落した中央部と両隣の三つの構造を架け替え、残る箇所の修繕、補強を進めている。架け替え箇所は、つり材の直径を12・5㌢から2倍の25㌢に変更し、補強部材を不要とした。残存箇所は、溶接によりつり材の直径を15㌢に補強。補強部材との接続は凹凸の少ない方法に変更し、再塗装や腐食箇所の溶接補強も行っている。
維持管理については、水管橋全体の状態を評価し、詳細な情報が記録されてこなかった従来の方法を改める。作成したマニュアルでは、部材ごとに点検項目を細分化し、アーチごとに評価を行う。近接目視が困難な箇所は、専門業者によるドローンやロボットカメラを活用した点検を委託する。
委員からは、「腐食をどのように見つけるのか、必ず対応するよう求める」「構造物はいつか必ず壊れるものという認識が重要」「点検の記録を積み上げ、マニュアルは更新していってもらいたい」などの意見があった。
瀬崎典男市公営企業管理者は「水管橋もマニュアルも出来上がるが、これで十分だという思いを持たず、バージョンアップできるように、管理状態も調べながら慎重に進めていきたい」と話した。
市は今後、できるだけ早期に最終報告書の案をまとめ、第4回調査委で承認を得る方針。