地方の声届きにくく 県内衆院定数1減へ

衆院選挙区画定審議会(区割り審、会長・川人貞史帝京大教授)は16日、小選挙区の「10増10減」に伴う区割り改定案を決定し、岸田文雄首相に勧告した。見直し対象は25都道府県の計140選挙区で、都道府県数、選挙区数とも過去最多。和歌山は定数が3から2に1減となる。2020年国勢調査に基づく選挙区間の人口格差(1票の格差)は現行の最大2・096倍から1・999倍に縮小する。

岸田首相は勧告を受け、「直ちに国会に報告し、勧告に基づき必要な法制上の措置を講じていく」と表明。この後、記者団の取材に応じ、改定案を反映した公職選挙法改正案を、今秋に召集が見込まれる臨時国会に提出する方針を明らかにした。

区割り審は20年国勢調査をベースに1票の格差が2倍未満に収まるよう検討してきた。全289選挙区の半数近くで境界が見直される。東京都で5増、神奈川県で2増、埼玉、千葉、愛知各県が1増となる一方、和歌山、宮城、福島、新潟、滋賀、岡山、広島、山口、愛媛、長崎の10県で一つ減った。

改定案による和歌山県内の新しい区割りは、新1区が和歌山、岩出、紀の川の3市、新2区が海南、橋本、有田、御坊、田辺、新宮各市と海草、伊都、有田、日高、西牟婁、東牟婁各郡となる。

現在の区割りと新区割り案の選挙人名簿登録者数の違いをみると、1日現在で、現1区30万7107人、現2区24万2064人、現3区24万8810人に対し、新1区は40万3851人、新2区は39万4130人。

定数減となる県内では、衆院の2議席を持つ自民党を中心に、反対論や選挙制度の抜本的な見直しを求める声が強い。

自民党県連は4月の県連大会で「10増10減」への反対決議を採択。「地方切り捨ての最たるもの」とし、県内の小選挙区が減少すれば「地理上は山間部を介して接してはいても生活圏としては接点のない選挙区」ができるなどと訴えた。

石田真敏元総務相(和歌山2区)は2月、自民党の有志議員の中心となり、衆院選挙制度の抜本見直しについて党内や与野党での議論を進めるよう党執行部に申し入れている。今回の勧告を受けてのコメントでは、「選挙区の変更により、長年培われた議員と有権者のつながりが断ち切られる可能性があり、信頼に基づく意見のやりとりが損なわれることが懸念される」とし、「今回の方式が今後の指針となれば、都市と地方の格差は今後も拡大を続ける」と危惧を示した。

仁坂吉伸知事も、「人口に比例して機械的に配分すると、地方の実情を知る国会議員の比率が低くなり、地方の意見が国政に届きにくい状況が生じ、その結果、過疎化、少子高齢化や人口減少といった地方で顕在化する課題の解決は遠のき、国の将来に大きな影響を与えかねない」とし、抜本的な制度見直しを国に求めるコメントを出した。

衆院の早期解散がなければ、新区割りは次の衆院選から適用される見通し。県内の小選挙区選出議員は、1区が岸本周平氏(国民民主党を離党)、2区が石田氏、3区が二階俊博元自民党幹事長だが、岸本氏は立候補を表明している次期知事選までに辞職する見込みであり、定数減により、確保してきた県都の議席を維持したい野党と、自民党内の競合が交錯する複雑な情勢が生まれることになる。

県政界の今後に与える影響も大きくなりそうだ。