極早生のトップバッター「竜門早生」

前号まで約1年半にわたり、和歌山県で栽培される柑橘(かんきつ)とその魅力を取り上げてきた。ことしは早くも梅雨明けを迎え、果物売り場では桃の販売が始まっている。全国生産量第5位を誇る和歌山県。とくに紀の川市で栽培される「あら川の桃」は全国に名の知れた存在。今週から和歌山県で栽培される桃を紹介していきたい。
桃は「古事記」や「桃太郎」、桃の節句など、邪気を払う力があるとされる縁起の良い果物。和歌山県では江戸時代に栽培が始まったとされ、古い歴史を持つ。果実にはビタミンEが豊富に含まれ、糖尿病や動脈硬化、アルツハイマー病などの生活習慣病や老化の予防に効果があるといわれる。また、食物繊維はコレステロールの正常化や腸内細菌を改善する作用があるなど、健康への効果が期待できる。
桃のシーズンのトップバッターとして登場するのが「竜門早生(りゅうもんわせ)」。竜門早生は1985年ごろ、紀の川市の竜門地区で発見された極早生品種で主に露地栽培されている。
果実はやや腰高で表皮は果頂部を中心に全体的に赤く色づいている。果実はやや硬めでナイフを使い、容易に輪切りにすることが可能。他の桃と比べ香りは強くなく、ほのかに香る程度で、果肉はやや引き締まった適度な食感。水分が豊富でジューシーな味わいがあり、甘さは控えめであるが、桃のシーズンの初めに食べる極早生品種としては十分。
旬は6月中旬から7月上旬。2013年度の生産量は57㌧と桃の中ではそう多くないが、和歌山生まれの新品種。桃のシーズン到来を知らせる竜門早生を、ぜひご賞味あれ。
(次田尚弘/和歌山市)