ノッカーは任せて 海南高女子マネ井上さん

第104回全国高校野球選手権和歌山大会がいよいよ12日に開幕する。海南高校野球部では、女子マネジャーの井上紗那さん(18)が、ノック練習の球出しをしている。井上さんは「チームの力になりたい。一戦でも多く勝ってほしい」と意気込んでいる。

井上さんは、毎日湯浅町から通学。2人いる兄がともに高校球児だったことから、よく試合を見に球場へ足を運んだという。中学では3年間バスケットボール部に所属していたが、兄の影響で高校ではチアや吹奏楽など、何か野球に携わることがしたいと希望していた。

受験前、同校の見学でグラウンドを訪れた時「私の居場所はここだ」とホッとした気持ちになったという。その時、野球部の先輩女子マネジャーに「一緒にやらない?」と誘われ、同校への入学を決意。猛勉強の末、合格できたと笑顔で振り返る。

入学後、先輩マネジャーのノックを出す姿に、「私もいつかやってみたい」と憧れの思いが芽生え、2年の秋ごろから部員らの練習後、後輩球児を誘いノックの練習を始めた。初めはバットにボールを当てることすらできなかったが、選手らのアドバイスを受けながら毎日30分ほど続けた。

腕前はめきめきと上達し、徐々にボールに当てる音が変わっていったという。「調子が悪いときは左に引っ張ってしまう」と、はにかみながらも身長149㌢の小柄な体型から、速度70~80㌔の球を右に左に勢いよく打ち分けていく。

井上さんの球を一番多く受けたという遊撃手の2年、長坂浬さん(17)は「朝練からノックに付き合ってくれた。感謝しかない。試合で練習の成果を発揮したい」とにっこり。投手の3年、前太陽さん(18)は「今では一人前のノッカー。チームになくてはならない存在」とほほ笑む。

井上さんは、おにぎり作りや洗濯、試合の準備など多忙なマネジャー業もこなす。「高校最後の夏。私ができることでみんなに貢献したい。とにかく全員が笑顔で終われたら」と、間もなく始まる熱い闘いに目を輝かせている。

同校は16日午前11時から箕島と対戦予定。

笑みがあふれる井上さん

笑みがあふれる井上さん