智弁、夏連覇へ きょう國學院栃木と対戦
7校目の夏連覇へ―。6日に開幕した第104回全国高校野球選手権大会は、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で全国3857校の頂点を目指して連日熱戦が繰り広げられている。昨年の覇者で5大会連続26回目の出場となる智弁和歌山が第8日の13日、第3試合(午後1時)に登場する。初戦の相手は、1985年以来37年ぶり2回目の出場となる國學院栃木。連覇に向けてスタートダッシュを切りたい智弁の初戦の見どころを探る。
昨年に続き49代表校の大トリ出場となった智弁和歌山。開会式から本戦まで時間が空いたものの、昨夏に出場経験を持つ岡西佑弥主将(3年)は「昨年は待たされた中でいろいろと準備できた」と動じることはない。
強さの秘密はどこにあるのか。智弁和歌山の練習グラウンドを訪れると、まず案内されたのはネット裏にある本部席。プロ入りした先輩たちから寄贈された冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器が並ぶ。外には、暑さ対策として巨大プールも。強靭な体づくりは、先輩たちの思いやりにより成り立っている。
この日、グラウンドでは、中谷仁監督が守備についている選手にノックを打ち続けていた。すると、3塁コーチャー役の選手に「なぜ、そのタイミングで掛け声を上げるんだ」と指導。ポジションを問わず、練習段階から「考える野球」を徹底することで、どんな状況でも動じない冷静な判断力が養われている。
打力は昨年よりも成長している。進化の秘訣(ひけつ)は、木製バット。レギュラー選手たちは打撃練習で木製バットを手にライナー性の当たりを連発していた。練習グラウンドは、両翼91㍍と狭いが、和歌山大会でともに3本塁打を放った山口滉起、渡部海でさえ初めは全く飛ばなかったという。中谷監督とスタッフ、選手が鍛錬を重ねた末に出した答えは、「自分の打ちやすい位置でフルスイングすること」だった。そうした努力が実を結び、和歌山大会ではチームで9本塁打を生み出した。
守りは、常時140㌔以上の高めに伸びる直球とスライダーの切れ味が鋭い右スリークオーターの塩路柊季と揺れ動くジャイロ回転の球で相手打者を翻弄(ほんろう)する本格派の武元一輝に期待。また、春季近畿大会から和歌山大会にかけて橘本直汰、西野宙、清水風太、濵口凌輔といった控え投手が台頭し、連覇へのピースは投打ともにそろった。
「しつこい」打線に警戒
一方、國學院栃木は、初戦の日大三島(静岡)戦で完投した2年生エース盛永智也を筆頭に、日大三島投手陣から13安打10得点を奪った打線の「しつこさ」に警戒したい。
打撃は、流し打ちを徹底。足を使って走者を進め、狙い球で引っ張るなど、低めにボールを集めていた日大三島の投手陣を攻略した。
先発投手は、初戦の日大三島打線に対して9回146球3失点7安打と試合をつくった本格派右腕の盛永が有力。中沢・吉野といったリリーフ陣も手ごわい。栃木大会ではワンポイントリリーフに起用された野手陣も多く、強豪の作新学院を破っただけに、柄目(つかのめ)直人監督の投手起用にも注目だ。柄目監督は00年に國學院栃木の選手としてセンバツに出場。準決勝で智弁和歌山と対戦し、2―10で敗退した苦い経験を持つ。18年のセンバツには、監督として智弁和歌山に4―7と敗れ、選手時代のリベンジを果たせなかった。柄目監督にとって智弁は因縁の相手でもある。
注目は立ち上がりの攻防
初戦突破の鍵は、立ち上がりの攻防に尽きる。木製バットの練習で手に入れた遠くに飛ばす力を発揮して、序盤から試合の主導権を握りたい。先発陣も相手の走者を気にせず、打者に集中すれば、國學院栃木打線の「しつこさ」を打ち消すことも可能だ。
ことしは3年ぶりに全校応援が復活。中谷監督も「僕の中では楽しみの一つ」と話すように、魔曲「ジョックロック」が智弁にとって「ここぞ」という場面で強力な後押しとなってくれるはずだ。(太田 陽介)
「最善の準備したい」中谷監督が意気込み
智弁和歌山の中谷仁監督は11日、初戦の國學院栃木との対戦を前に、チームの印象や意気込みを語った。
現在のチーム状態については、試合形式のメニューを順調にこなし、悪くないとしながらも、「(和歌山大会から)少し(日程が)空いているので、試合になってどう対応できるかという不安がある」と明かした。
國學院栃木の印象については、走攻守ともにバランスの取れた良いチームだとし「俊足の1、2番と振れている中軸をマークしたい」と話した。
理想の試合展開については「打ち合いではなく塩路、武元の両エースが最小失点に抑えて、最終的には1点でもリードしてゲームを終えたい」とし、「いいチームと試合ができるので、しっかり自分たちの最善の準備をしてベストを尽くしたい」と意気込んだ。