様々な味わい方が楽しめる「白鳳」

 前号では、低温期間が短くても育成が可能で、温暖化に適応した品種「さくひめ」を取り上げた。今週は桃の代表格として知られる「白鳳」を紹介したい。
 白鳳は大正14年(1925)に神奈川県の試験場で「白桃」と「橘早生」を交雑させて育成した品種。昭和8年(1933)に白鳳と命名された。果実はやや大きめで重さは250~350㌘程度。果皮は白く、日光に当たる部分が赤く染まる。
 食してみると果肉は柔らかく、酸味はあまり感じられず、上品でほどよい甘味と香りが楽しめる。果汁が豊富で、フォークを刺すとそこからあふれ出るほど。とろけるような口当たりが特徴で、まさに桃の代表格といえる味わいである。
 白鳳は、先に取り上げた「日川白鳳」や「桃山白鳳」などは白鳳の枝替わりとして発見された品種で、これらを総称して「白鳳系」と呼ばれ、いずれも果汁が豊富でジューシーであるのが特徴。
 白鳳の旬は7月中旬から8月中旬にかけて。ハウス栽培されたものは5月中旬から出荷が始まる。収穫の期間が長く、比較的日持ちが良いことから、市場で目にすることが多い品種である。単純に皮をむいて食する他に、タルトやケーキに添えられることや、ジュレ、シャーベットなどに加工されることもあり、さまざまなシーンで登場するのが白鳳の面白いところ。
 農水省統計によると、栽培地(栽培面積)の第1位は山梨県(45・5%)、第2位は和歌山県(22・4%)、第3位は岡山県(9・3%)。和歌山県は国内の総栽培面積の4分の1近くを占め、盛んに栽培されている品種である。
 県内で手軽に食べることができる白鳳。ぜひ、その味わいを楽しんでみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)