雌の個体3匹を確認 外来種コクチバス駆除
特定外来生物に指定されている外来魚「コクチバス(小口バス)」が近年、全国的に生息域を広げている。和歌山県内でも紀の川で爆発的に増えていることを受け、紀ノ川漁協(川口恭弘組合長)は25日、紀の川市藤崎の藤崎頭首工下流で駆除を実施し、3匹のコクチバスを捕獲した。同組合では毎年2~3回、ブラックバス(オオクチバス)の駆除を行っているが、コクチバスの駆除は今回が初めて。川口組合長(70)は「ゼロにすることは無理だから、極力増えないように駆除をしていく」と話し、釣り人へも駆除への協力を呼び掛けていく。
北アメリカ原産のコクチバスは、名前通り小さい口が特徴。遊泳力があり、流れの速い瀬でも生活できるため、主に池や湖、ダム湖など、淀みで生息する同じ特定外来生物のブラックバスより、河川内でも繁殖しやすい。魚食性が強く、アユなどの在来種への被害がブラックバスよりも大きくなる可能性が危惧されている。
県内では2010年に橋本市のため池でコクチバスが確認されたが、その時は池の水を抜いて全て駆除。紀の川でも10年ほど前からコクチバスの生息が噂されており、3年前からはアユ漁の投網に掛かってくるまでに急増。紀の川の上流、奈良県吉野川に密放流されたものが下ってきたと考えられ、現在は和歌山市六十谷から上流全域に生息域が広がっていると想定されている。
アユ漁師の小西孝明さん(53)は駆除の前日にアユ漁をした際、アユよりもコクチバスの方が多く網に掛かったと話し、どのような被害が出ているのかはまだ分からないとした上で「天然の遡上(そじょう)した魚や放流した魚が食べられる」と漁業資源への被害を懸念する。
今回の駆除は普段は禁漁区の同所で、県から特別な許可を得て実施。同漁協の役員ら6人が参加し、刺し網4枚を使い約120㍍にわたってコクチバスの捕獲に努めた。例年、外来魚の駆除は魚が越冬するため1カ所に集まる冬場に行っているが、餌を食べない冬は外来魚が主に何を食べているかが分からないことから、今回はこの時期に実施。県水産試験場内水面試験地の職員らも立ち会った。
この日捕獲されたコクチバスは、全長約25~31㌢の雌3匹で、試験場の職員らが現地で解剖。胃の内容物を調べると、最も大きい個体の胃から在来種のカマツカが出てきた。今回の駆除で、アユではなかったもののコクチバスが在来魚を捕食していることが明らかになった。
同試験場の研究員、松尾怜さん(29)は「特定外来生物を放つことは犯罪であり、絶対にしないで」と呼び掛け、「身近な川にも特定外来生物がいることを知ってもらい、何ができるのかを考えてほしい」と話した。
リリースしないで釣り人に呼び掛け
県では現在、特定外来生物である魚を釣った場合のキャッチ&リリースは「現状維持」との観点から禁止されていない。他県では、釣り人が釣った外来魚を漁協が買い取るなどの取り組みもある。
今回の駆除を機に、紀ノ川漁協では釣り人にリリースをせずに持ち帰ってもらえるよう、「今の状況を多くの方に知ってもらうところから始めたい」と話している。
【コクチバス】サンフィッシュ科オオクチバス属の淡水魚。北米原産で、日本では1925年にオオクチバスと共に芦ノ湖に放流された。現在全国的に密放流がされ、低水温、流れの速い河川でも生息でき、どう猛な性質のため、アユをはじめとする在来生物への影響が危惧されている。通称「スモールマウス」や「スモール」と呼ばれ、ルアーフィッシングのターゲットとして人気がある。