太刀に銀象嵌文様 岩瀬千塚古墳群

和歌山県内文化財の関係者ら有志7人からなる研究グループは、和歌山大学紀州経済史文化史研究所が所蔵する、全国有数の群集墳で特別史跡の「岩橋千塚古墳群」の出土品の鉄片から「銀象嵌(ぎんぞうがん)文様」が確認されたと発表した。県内の象嵌の出土事例はこれまで、同古墳群内の銀象嵌刀装具の2例のみ。鉄片は古墳時代の大刀とみられ、刀身に施された象嵌の出土としては、県内初となった。

同大で17日、報道機関向けの説明会が開かれ、同研究所の長廣利崇所長、吉村旭輝専任教員、県教委文化遺産課調査班の瀬谷今日子主任、和歌山市文化振興課の冨永里菜さんが出席。経緯などを説明した。

同グループは3年ほど前から、同大が所蔵する同古墳群の出土品の再調査や整理を進める中で、ことし4月に大刀の鉄片(幅2・3㌢×2・2㌢)に銀象嵌文様を発見。X線撮影をしたところ、象嵌から銀の成分が検出された。

銀象嵌とは、素材の鉄を彫り、その部分に銀をはめ込んで模様や文字を表す技法の一つ。古墳時代に先端技術として朝鮮半島から渡来したとされている。

現在までに国内では銀象嵌の資料が600点ほど見つかっており、そのほとんどが刀装具に付けられたものであるが、今回発見された銀象嵌は刀本体に見つかったという。

また、2重の同心円文とその外側に連弧状の文様を持つ「連弧輪状文」であることも判明。銀象嵌の連弧輪状文はこれまでに国内で21例しか確認されておらず、貴重な発見となった。当時の政権と直接的な関わりを示す今回の発見によって、銀象嵌文様が施された大刀を持つことができた当時の有力者の存在が浮かび上がったとし、瀬谷主任は「不明だった岩橋千塚古墳群の実態を明らかにする非常に重要な発見になった」と話した。

左から吉村専任教員、冨永さん、瀬谷主任(右上は象嵌文様が施された鉄片)

左から吉村専任教員、冨永さん、瀬谷主任(右上は象嵌文様が施された鉄片)