誰一人取り残さない 海南市一斉防災訓練

海南市は南海トラフ地震に備え13日、市全域で全市民約4万8000人参加の一斉防災訓練「市民みんなで防災訓練」を実施した。要配慮者である高齢者や障害者、乳幼児ら、あらゆる人の命を支えようというインクルーシブ防災の視点に立ち、各地域で津波避難場所への避難や、在宅避難者の安否確認訓練などが行われた。

東日本大震災をはじめとする大規模災害では、高齢者や妊婦らの取り残しや、避難環境に十分適応できなかったとの報告が多くあったことから、市は課題を踏まえた避難所設置や運営実施ができるよう、取り組みを進めている。

今回の訓練は午前9時ごろ、震度7の南海トラフ地震が発生し、県に大津波警報が発表されたと想定。最大8㍍の津波が来るとの防災無線放送が流れ、各自のスマートフォンに緊急速報メールが届くと、机や椅子の下に隠れ、身を守る姿勢を取るところから始まった。

その後、指定避難所の巽中学校(同市阪井)に移動し、インクルーシブな視点による「誰一人取り残さない避難所運営訓練」が実施された。

また、地震発生から3日後を想定した訓練では、巽地区自治会や自主防災、支援センターの利用者や企業、海南高校生など約200人が参加し、避難する人の「床が冷たい」「間仕切りがなく視線が気になる」とのニーズに合わせ、段ボールパーテーション、段ボールベッド、テント組み立てなどを実践した。

1枚の大きさが縦160㌢、幅100㌢の間仕切り段ボール9枚をダブルクリップでつなぎ合わせ、6平方㍍の広さの空間が18カ所出来上がった。簡易のファミリーテントも設置され、開始から約20分で完成した。

ボランティアで参加した上西令子さん(68)は「昨年に続き2回目の参加。ベッドなど女性の力でも簡単に組み立てることができた」と話し、講師の和歌山大学災害科学・レリジエンス共創センターの宮定章特任准教授は「日頃の訓練の成果が出てスピードが速い。乳幼児から障害者、高齢者が参加する訓練は珍しい。1回だけでなく継続して繰り返してほしい」と講評した。

他にも、断水を想定し雨水を使った対応訓練や移動通信車による通信確保の訓練、電気自動車からの電源確保訓練なども行われた。総務部危機管理課の坂本匡也課長は「今回の訓練は車いすの人や高齢者などに重きを置いた。手すりを設置することや復興に向けたタイムスケジュールの確認ができた」と話した。

 

段ボールベッドを手早く組み立てていく参加者