映画「あつい胸さわぎ」 和市で先行上映会

和歌山市雑賀崎などで撮影が行われ、吉田美月喜さんと常盤貴子さんがW主演を務める映画『あつい胸さわぎ』の全国公開を前に2日、和歌山市中のイオンシネマ和歌山で先行上映会が開かれた。登壇した、まつむらしんご監督は「この物語は、東京ではなく古き良き日本の風景、空気が残っているところでやった方が絶対に意味のあるものになると思った」と和歌山への思いや撮影秘話などについて語った。

若年性乳がんをテーマに、母娘の複雑な心象風景を描いた、演劇ユニット「iaku(いあく)」(横山拓也代表)の同題舞台を映画化。上海国際映画祭でアジア新人賞を受賞した、まつむら監督がメガホンをとり、脚本は、映画『凶悪』で日本アカデミー賞優秀脚本賞に輝いた髙橋泉さんが手掛ける。

物語の舞台は、灯台のある港町の古い一軒家。母の武藤昭子(常盤さん)と娘の千夏(吉田さん)は2人、つつましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。念願だった芸術大学に通う千夏。新しい生活に胸を躍らせていた矢先、初期の乳がんが見つかる。初恋の相手、光輝(奥平大兼さん)への恋心と女手一つで育ててくれた母の思いに揺れる中、初恋の胸の高まりはいつしか胸騒ぎになっていた――。

昨年7月から8月にかけて和歌山で撮影。雑賀崎では空き家にセットを組み、主人公親子が暮らす自宅シーンを、紀の川市貴志川町の染織加工会社・吉田染工の工場では、昭子の職場シーンを撮影。地元住民や印南町で旗揚げしたさくらサーカスのメンバーらも出演した。新和歌浦のおっとっと広場や、和歌山電鐡貴志川線の伊太祁曽駅、美園町のみその商店街なども舞台になっている。

劇中では、和歌山弁で主人公親子がやり取りするシーンも。「えーかー」、「やろ」などの方言を織り交ぜた。

先行上映会には、映画に出演や協力をした地元の住民や報道関係者ら約110人が訪れた。

登壇したまつむら監督は「18歳で若年性乳がんになる千夏に『君の人生はまだこれから始まる、これで終わりではない、大丈夫』とエールを送りたい」と映画化したきっかけを話した。

一番思い入れのあるシーンについては、主人公の千夏が「おっぱいなくなっても恋とかできるんかな…」と吐露する場面を挙げ、「脚本でこのシーンを読んで僕は泣いてしまった、大事なシーン。1回で完璧な演技が撮れ、『カット』と言った瞬間に拍手が起きた。あの瞬間が見られたのは監督人生でも初で、今でも鳥肌が立つ」と笑顔。最後に「ようやく皆さんの目の前にこの映画を持って来ることができて幸せ。この映画を見て救われる人がいてほしいと思う」と呼び掛けた。

映画「あつい胸さわぎ」は来年1月27日に全国公開される。

作品への思いを語るまつむら監督

作品への思いを語るまつむら監督

 

映画「あつい胸さわぎ」(2023映画『あつい胸さわぎ』製作委員会提供)

映画「あつい胸さわぎ」(2023映画『あつい胸さわぎ』製作委員会提供)