災害時の食考える イコール会議10周年講演
多様な分野の女性がネットワークをつくり、和歌山を元気にしようと活動している「和歌山イコール会議」(松原敏美代表)の設立10周年記念講演会「災害と食」が4日、和歌山市の県JAビルで開かれた。災害関連死を防ぐ重要なテーマである「食」について専門家らが話し、平時から地域住民らが参加できる支援の仕組みづくりを考え、意見を交わした。
同会議は、県男女共同参画センター主催の「つながりを広げる交流会」などをきっかけに、13人の発起人の呼び掛けに約130人が集まり、2013年12月に設立。活動は10年目を迎え、「地域づくり」「防災」「働き方」「子育て・介護環境」「暴力防止」「多様な生き方応援」の6部会が、女性や地域のさまざまな課題について共に考え、取り組んでいる。
記念講演会には、会場とオンラインを含めて約120人が参加し、まず、公益財団法人味の素ファンデーション被災地復興応援事業マネージャーの齋藤由里子さんが話した。
災害時の避難所では、おにぎりや菓子パン、カップ麺、揚げ物中心の弁当などの食事が長く続き、食欲不振や体調不良を訴える被災者が多く出る実態があり、「公助」には限界があると齋藤さんは説明。「もしも(災害時)」の時に生きるのは「いつも(平時)」のつながりであり、地域の互助力が問われると指摘した。
全国の被災地では、住民らの協力によって、栄養バランスを考えた温かい食事が避難所で提供されていた事例もある。
同財団は東日本大震災で被災した東北3県で参加型料理教室を3700回以上開催。「一緒に作って一緒に食べる」活動を継続することが、地域のコミュニティーを強め、災害時の食の備えに自然とつながっていくことを紹介した。
続いて、日本栄養士会災害支援チーム(JDA‐DAT)リーダーで、県栄養士会理事の伊藤智子さんが講演した。
被災後に栄養の不足や偏りが続くと、循環器疾患や感染症などのリスクが高まり、災害関連死につながることから、災害時の食事、栄養問題の大切さを強調。アレルギーなどにより、避難所の通常の食事が食べられない要配慮者への対応の必要性も話した。
JDA‐DATは、こうした災害時の栄養問題に対応するために結成。伊藤さんは「災害から助かった命、助けられた命をつなぐことが大切」と、活動への思いを話し、連携を呼び掛けた。
県防災企画課の藤戸恵介副課長は、避難所で温かい食事を円滑に提供できる体制を整えるため、県調理師会、日本調理師会、県中小企業団体中央会と協定を結んでいることなど、県の取り組みを紹介した。
講師3人を交えたクロストークも実施。地域と行政、民間が話し合いの場を持ち、負担を軽くしながら災害に備える仕組みをつくることや、地域で防災の取り組みをコーディネートする人材を育てていくことなどが話し合われた。
講演の他、イコール会議の防災部会が取り組んできた、手作り「マイ・トイレセット」の備蓄事業の報告もあり、6200セットを県社会福祉協議会に寄贈。会長の仁坂吉伸知事に、防災部会の市場美佐子部会長らが目録を手渡した。