果汁多くサクサクした食感「太秋柿」

前号では「富有柿(ふゆうがき)」と並ぶ柿の代表格として、180年近い歴史を持つ「次郎柿(じろうがき)」を取り上げた。今週は富有柿と次郎柿を親に持つ「太秋柿(たいしゅうがき)」を紹介したい。
太秋柿は1977年に果樹試験場で、富有柿に次郎柿と興津15号の交雑種を掛け合わせてできた完全甘柿。1995年に品種登録されて以降、各地に栽培が広がっている。
果実は400㌘程度と大玉で、物によっては500㌘を超えるものもある。果肉はサクサクしており果汁がとても多い。糖度は17度程度でじゅうぶんな甘さがある。熟すにつれて表皮にひび割れができやすいことから、表皮が青いうちから収穫される。完全甘柿であることから青いうちから食べることができ、熟したものよりもサクサクした食感が楽しめる。
太秋柿の特徴として、果頂部(ヘタの反対側)を中心にして、円を描くように細かなひび割れが入りやすいことが挙げられる。これを「条紋(じょうもん)」といい、果実の中でも糖度が高い部分にできるといわれ、見た目が悪く商品価値は下がるものの甘さを求める方にとっては重要なポイント。手に取って条紋の有無を確認し購入してみてほしい。収穫時期は富有柿と比べて少し早めの10月下旬から11月上旬ごろ。
2019年度の農水省統計によると、栽培面積の第1位は熊本県(118・4㌶)、第2位は福岡県(55・5㌶)、第3位は岡山県(15・1㌶)、第4位は愛媛県(14・4㌶)、第5位は岐阜県(14・3㌶)となっている。和歌山県の栽培面積は4・8㌶でわずかながら栽培されている。
富有柿と次郎柿の良いところを掛け合わせてできた太秋柿。ことしのシーズンは終わっているが、ぜひ来年、食べ比べて楽しんでみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)