根来塗の魅力にふれて 池ノ上辰山さん作品展
根来塗の室町時代の技法を復興した和歌山県岩出市の池ノ上辰山(しんざん)さんの展覧会「根来寺根来塗宗家 池ノ上辰山展 重ねる器の妙 辰山と直弟子」が、10日まで和歌山市友田町の近鉄百貨店和歌山店5階画廊で開かれている。
根来塗曙山会が主催。根来塗師の辰山さん(62)と2人の直弟子、池上和慶さん(31)、松江那津子さん(41)による作品600点が展示販売されている。
根来塗は、1585年に豊臣秀吉の紀州根来攻めによって跡形もなく焼けてしまったといい、失われた室町時代の技法を、辰山さんと根来塗の権威である河田貞氏が共に探求し、復興させた。
2007年には県指定の「根来寺根来塗」として復興登録。辰山さんは21年度、大桑教育文化振興財団の大桑文化奨励賞や文化庁の文化庁長官表彰を受けた。
展覧会では、室町時代の技法で作られた辰山さん新作の椿椀をはじめ、箸、椿皿、豆子(ずつ)、角切折敷など各作者の作品を紹介している。
高度な技法で制作された作品は、下地の層が強いため、熱に強く剥離がほとんどないのが特長。「辰砂(しんしゃ)」という鉱石を使用し、600年前と同じ朱色を施している。
また、使い込むことで、黒い色の層が刷毛目のように表面に出る「なれ」が味わい深く、普段使いができる一生ものだという。辰山さんは「焼き物とは違う木の器の魅力を感じてもらえたら。ぜひ手にとって見てもらいたい」と話している。
午前10~午後6時半(最終日は3時)。期間中は辰山さんが在廊する。問い合わせは同会(℡0736・62・3557)。