2020年に出荷を開始「紀州てまり」
紀州てまりは、和歌山県の果樹試験場が「早秋柿(そうしゅうがき)」と「太秋柿(たいしゅうがき)」を掛け合わせて作ったもの。2008年に交配し、13年に食味や果形がよいものを選抜しさらに栽培。19年に品種登録され20年から出荷が始まった新品種である。
県内における柿全体の栽培面積は約2600㌶。渋柿が77%、甘柿が23%で、渋柿のうち「刀根早生柿(とねわせがき)」は栽培面積の半数を占め、収穫の最盛期である10月上旬に出荷が集中。販売単価の下落が課題で、県内で育てられる品種の分散化による出荷時期の平準化が求められている。その中で刀根早生柿の出荷が終わる10月中旬以降に市場での競争力の高い柿を育成しようと、10月中旬以降に収穫でき、サイズが大きく、高糖度であることを育成目標として研究が始まった。
育成目標のとおり、紀州てまりの特徴はサイズが極めて大きいこと。大きいものでは400㌘を超えるものもあり、その名のとおり手毬のようなサイズ感。糖度は親品種である太秋柿よりも高い17%程度。食してみると、甘さが際立ち、やや柔らかい果実とのバランスが絶妙。筆者が今季食べた柿の中で最もうまいと感じたものである。
2020年に出荷が始まった新品種であるものの、農水省統計(令和元年)によると和歌山県内での栽培面積は17·2㌶。昨年は55㌶にまで栽培面積を広げるなど期待の高まりがみられる。
東京の百貨店では贈答品として扱われ、価格は1個600円以上の値を付ける。筆者は紀の川市の産直市場で購入したが、同様の価格であった。
一般的な柿と比べると数倍以上の価格にもなる紀州てまり。日本一の柿の生産地である和歌山県が誇る高級ブランド柿として、ますますの発展を期待したい。
(次田尚弘/和歌山市)