干し柿の最高級品「蜂屋柿」
前号に続き、今週も干し柿にして食べるのが一般的である「蜂屋柿(はちやがき)」を紹介したい。
蜂屋柿は岐阜県美濃加茂市蜂屋町で栽培が始まったとされる大玉の柿。釣鐘のような形をしており、果実の下へいくほど先が尖っているのが特徴。一般的には250㌘程度であるが、筆者が手に入れたものは300㌘ほどと大きめ。表皮はやや濃い橙色で、果肉はオレンジで種はない。
前号で取り上げた愛宕柿と同様、袋詰めされたパッケージには「渋柿」と書かれ、干し柿にするためのビニールひもが同梱され販売されている。筆者は愛宕柿と一緒に干し柿にしたが、食するためにかかる期間は同じく約3週間。愛宕柿と比べて大きなサイズで、乾燥しても大きな仕上がり。干し柿にした時の果肉の部分が多く、愛宕柿よりも食べやすい。甘味も強く、いくつでも食べられてしまう旨味がある。
美濃加茂市では蜂屋柿を使った干し柿が伝統品となっており「堂上蜂屋柿」の名称で販売されている。サイズにより「誉」「雅」「寿」「秀」「優」の5段階に分けられ、最高ランクの誉は乾燥後の重さが1粒90㌘以上で、形や質が優れたものにだけ付けられる称号で最高級品。1900年のパリ万国博で銀杯、1904年のセントルイス万国博で金杯を受賞した歴史を持つ。
2012年の農水省統計によると、栽培面積の第1位が福島県(281・1㌶)、第2位が長野県(25・0㌶)、第3位が宮城県(23・6㌶)、第4位が岐阜県(17・9㌶)、第5位が群馬県(6・6㌶)となっている。統計上、和歌山県は現れないが、筆者はかつらぎ町の産直市場で購入。少ない量ながら県内でも栽培されている。干し柿にするときは、できるだけ大きなサイズのものをお薦めしたい。
(次田尚弘/和歌山市)