高齢者虐待の通報、被害者とも増加 21年度
2021年度に和歌山県内30市町村で受け付けた高齢者虐待に関する相談・通報は370件(前年度341件)、虐待と判断された事例は190件(同186件)、虐待を受けた人は226人(同186人)でいずれも増加したことが県のまとめで分かった。
相談・通報のうち養介護施設従事者等による虐待に関するものは22件で、虐待と判断された事例は8件。虐待を受け人は前年度より30人増加の39人だが、このうち29人は、高齢者の安全を目的としてベッドに4本柵を設置したことが、適切な手順を踏まずに行われたため、不適切な身体拘束として身体的虐待に認定されたからだった。
虐待と判断された事例の種別(複数回答)は、身体的虐待が33人、言葉などによる心理的虐待が7人。性別は女性31人、男性8人で、要介護状態は3以上が全体の71・7%を占めた。
養護者による虐待の相談・通報は348件で、うち虐待と判断されたのが182件、187人が虐待を受けていた。
虐待と判断された事例の種別(複数回答)は、身体的虐待が76・5%(143人)で最も多く、心理的虐待が34・2%(64人)、介護などの放棄が13・9%(26人)、預金を勝手に使うなどの経済的虐待が12・8%(24人)だった。
虐待の深刻度は、4段階評価で2番目に軽い「中度」が最多の36・9%で、次いで最も軽い「軽度」が21・9%、2番目に重い「重度」が18・7%で続いた。
虐待を受けた高齢者の74・9%を女性が占め、要介護認定者は半数強の53・5%、年齢別では80~84歳が24・1%で最も多かった。
虐待をした人の高齢者との関係は、息子が35・8%で最も多く、次いで夫が27・5%、娘が16・6%の順。高齢者と同居しているケースが85・1%に上った。
家族構成は、未婚の子と同居が33・2%、次いで夫婦のみ世帯が29・9%、子夫婦と同居が12・8%だった。
虐待への対応は、32・1%で虐待者から高齢者を分離し、市町村長が職権により介護サービスを利用させる措置、契約による介護保険サービスの利用、一時入院などを行った。
虐待の防止、対応に向けた市町村の体制整備の状況をみると、対応マニュアルや業務指針などの活用は全市町村が実施し、日常生活に支障がありながら福祉や保健医療サービスを利用していない高齢者の早期発見の取り組みや相談の実施は86・7%で行われている一方、施設・事業所での虐待防止の取り組み状況の把握(26・7%)などは低い割合だった。
県内の高齢者虐待に関する相談・通報件数などの推移