海に転落の男性救助 海南の中井さんに感謝状
海に転落した男性の人命救助に貢献したとして、和歌山県の海南海上保安署と海南市消防本部は14日、同市の大学院生、中井美織さん(26)に感謝状を贈った。
同保安署によると、2021年7月15日午後3時ごろ、同市下津町の塩津漁港で、漁に出るため係留中の漁船に乗り込もうとした高齢の男性が、ロープを手繰り寄せている最中にバランスを崩し海に転落。散歩中の中井さんが、付近にいたもう一人と協力して船上に引き上げ救助した。
中井さんは、消防隊員に高齢男性を引き継いだ後に立ち去っており、名前などが判明していなかったことから同保安署が探していたという。ことし1月に中井さんから同保安署に電話があり、今回、感謝状を贈呈することができた。
中井さんは漁船にしがみつく男性を見つけ、おぼれているのではと思ったが、「漁をしているだけかも。声を掛けて怒られたらどうしよう」と話し掛けることをためらったという。
しかし、中井さんは過去にうまく歩けなくなり、その時周囲に気付いてもらえず、助けてもらえなかったつらい経験があったことから、「声を掛けないより、掛けて怒られたほうがましかな」と勇気を出して声を掛け、救出した。
中井さんは同年11月ごろ、高齢男性を共に引き上げた協力者(すでに感謝状を贈呈済み)に郵便局で再会。自身が探されていると知ったといい「私はできた人間ではないので、はずかしくてためらっていた。体調を崩していたこともあり今になった」と話した。
感謝状の贈呈式は同市下津の同保安署下津港合同庁舎であり、浅野光行署長が「1年7カ月前の救助と今回名乗り出てくださった勇気の2度感謝したい」と述べ、同市消防本部の山田量也消防長と、それぞれ感謝状を手渡した。
中井さんは「ずっとためらい、ここに出る勇気がすごくいった。高齢男性が無事だと聞いてホッとしている。この勇気をこれからも他の所でもできたらいいなと思う」と笑顔で話した。