国際ロマンス詐欺防ぐ 紀陽銀行員に感謝状
被害者の恋愛感情に乗じた卑劣な「国際ロマンス詐欺」の被害を水際で阻止したとして、和歌山東署は4日、㈱紀陽銀行東和歌山支店(和歌山市友田町)の行員、太田早紀さん(33)と谷口かおりさん(51)の2人に感謝状を贈った。
同署などによると、6月12日午後1時55分ごろ、40代の女性が同支店を訪れ、窓口業務をしていた谷口さんに140万円の振り込みを依頼した。
谷口さんは振込先が外国人名義かつ高額であったことから不審に思い、振込目的について質問。女性が話そうとしなかったため、上司の太田さんに報告した。
話を聞いた太田さんは「国際ロマンス詐欺」の可能性が高いと感じ、女性が答えやすいように質問を重ねていったところ、女性はSNSで知り合い、一度も会ったことがない外国人の男から指定された口座に1万㌦を振り込むように言われていたことが分かった。
完全に信じ込み、「相手に迷惑をかけたくない」と気遣う女性に対し、太田さんは「安心して振り込みませんか」「プロの警察官に相談してみましょう」などと丁寧な声かけで女性に振り込みを思いとどまらせ、詐欺被害を未然に防いだ。
その後の同署の調べで、女性は5月ごろ、ヨーロッパの病院で医師として勤めるアメリカ人を名乗る男からSNSでメッセージを受け取ったのを機に頻繁に連絡を取り合うようになり、結婚の約束を交わしていたこと、男が来日するための休暇証明書の発行費用として1万㌦の振り込みを依頼されていたことなどが分かったという。
同署で行われた贈呈式で藤田和義署長は2人に感謝状を手渡し、「忙しい業務の中、違和感に気付いて阻止していただき、大変感謝しています」と伝えた。
詐欺被害を阻止するのは2回目だという太田さんは「過去の経験が役立った。今後も支店全体で連携し、お客さまの被害を未然に防いでいきたい」と笑顔。谷口さんは「ただお客さまを案内するだけでなく、いろんな会話をしながら少しでもヒントを得たら自分だけでなく共有していきたい」と意気込んだ。
同署によると、県内の「国際ロマンス詐欺」の被害届の受理件数について、ことしはまだ0件である一方、昨年は8件で被害総額は約4000万円。一昨年は15件で、被害総額は1億円余りに上るという。
同署の三坂耕平刑事官は同詐欺について、「被害者の心の機微にふれ、恋愛感情を否定することにもつながるので対応が難しい」とした上で、「被害を防ぐのは警察だけでは難しく、金融機関をはじめ、関係機関の協力を得て1件も発生させないように進めていきたい」と話した。