和歌山市が事前復興計画策定 中核市初

南海トラフ巨大地震を想定し、和歌山市は迅速な復興のための基本方針を定めた「事前復興計画」を策定し、10日に公表した。人口20万人以上の中核市では初の策定。津波浸水想定地域に居住の集中地域が含まれ、沿岸部に製造業や観光施設が集積しているなどの市の特徴を踏まえ、既存の土地や高台を生かした復興を掲げている。

昨年11月から検討を始め、コンサルティング会社を使わず、市職員を中心に策定を進めた。計画に市民の声を反映させるため、市のインターネットモニターへの調査、大学生対象のワークショップなどを実施。また、女性職員を対象としたワークショップも行い、多様な視点の把握に努めた。

計画は「希望をもち 安心して暮らせる まちの活力の再創生」を基本理念とし、「復興ビジョン」として住環境、産業、市街地の復興を柱に、30の取り組み方針を掲げている。

住環境の復興では、建築物・宅地の危険度判定の迅速な実施、使用可能な住宅の早期復旧、ライフラインの早期復旧、災害廃棄物の適正処理などを挙げ、専門人材の確保、関係事業者との連携など事前の取り組みのポイントも列挙している。

産業の復興では、物流ルートの確保と拠点施設の早期復旧、津波で塩害を受けた農地の再生支援、事業の高度化促進など、市街地の復興では、住民の意向を尊重した復興まちづくり方針の検討、浸水リスク軽減に向けた検討、高台等安全な土地の有効活用などが示されている。

災害発生後、これらの復興ビジョンが迅速、着実に実現されるよう、計画ではさらに、緊急対応期、応急復旧期、復興始動期、本格復興期の4段階に分け、全体の流れや体制、行政の対応行動などを整理している。

尾花正啓市長は、職員中心で策定したことについて、「職員が現場を知ることを重視した。コンサルタントから聞くだけでは自分のものにならない。計画を運用する上で、自分たちで作り上げたものであることは非常に大事だ」と話した。

計画は市ホームページや市役所、各支所・連絡所などで閲覧できる。

事前復興計画について説明する尾花市長

事前復興計画について説明する尾花市長