IT化で業務改善 会計事務所がシステム開発

人手不足や物価高に伴うコスト上昇が企業を直撃し、業務の効率化、改善が急務となっている。特に影響が大きい中小事業者に、IT化による経営改善を進めてもらおうと、和歌山市黒田の税理士法人風神会計事務所では、パソコンが苦手な人にも扱いやすいシステム開発を自社で手掛けている。「IT化から取り残される経営者を一人でもなくしたい」という同事務所の取り組みを聞いた。

 

IT化の遅れと課題

県内で中小企業を中心とした約650社の税務を担当している同事務所システム・企画室の西浦亮さんは「和歌山にはIT化が進まず、手書きの帳簿など昔のやり方のまま止まっている会社は多い」と話す。

IT化が進んでいない会社によくみられる問題点は、業務のマニュアルや規定が整備されず、業務を把握しているベテラン社員が属人的に仕事をしていること。また、書類や資料の見間違い、データの入力ミスなど、人為的なミスの発生も多いという。

 

RPAで業務改善

こうした問題の解決策として同事務所が提案しているのが、パソコンで行う業務などを自動化するテクノロジー「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」を活用した業務改善だ。

請求書作りや会計などのパソコンへの入力作業はRPAが行い、人は出来上がったものを確認する。同事務所では、まず自社で取り入れてみたところ、業務効率が上がったことから、顧客にも勧めるため、2年前にシステム企画室を立ち上げ、取り組みを始めた。西浦さんと林ひとみさんの2人で開発を行っている。

業種や会社の体制に合わせ、システムはカスタマイズできる。作業はRPA、確認は人と分業することでミスの発生などのリスクを減らし、迅速で正確に業務を進めることができる。RPAのコストは人を雇用するよりも低く、経営の負担軽減にもつながるという。

「RPA導入を提案すると『ロボットが人間の仕事を奪うのか』と拒否反応を示されることもあった」と西浦さん。しかし、経営者の悩みである人材不足、経営難を解決するには必要不可欠な取り組みではないかと考えている。

 

作業時間が半減

御坊・日高地方を中心に在宅介護サービスを提供している社会福祉法人黎明菫会は、同事務所の提案で1年ほど前にRPAを導入した。

事務の川﨑浩美さんによると、取引先の支払い一覧と部署ごとの出納帳は従来、表計算ソフトで管理し、会計ソフトに入力し直した上で、複数人でチェックしていた。表計算と会計のソフトを使える人しか作業ができず、残業もあった。

RPA導入後は、入力をする必要がなく、確認作業のみとなり、ミスはなくなり、作業時間は半減したという。「RPAは昼休みや夜中にも働いてくれるのでとても助かっている。空いた時間は他の業務に専念できる」と川﨑さんは話す。

西浦さんは、RPAの導入は今いる社員の仕事を奪うことではないとし、「人間がやらなくてもいい仕事と、人間がやるべき業務を分け、社員が空いた時間を有意義に過ごせる、働きやすい会社を目指してほしい」と願っている。

 

システム・企画室の西浦さん㊨と林ひとみさん