巨峰の枝変わり品種「紫玉」

前号では、糖度が高く1粒が30㌘を超える大粒の実が特徴の希少品種「藤稔(ふじみのり)」を取り上げた。今週は、藤稔と比べ粒は小さいが糖度が高い「紫玉(しぎょく)」を紹介したい。
紫玉は昭和57年に「巨峰」の優良系統である「高墨(たかすみ)」の枝変わりとして、山梨県で発見されたもの。昭和62年に品種登録されている。
高墨という品種は、実が巨峰よりも一回り小さく、コクのある味わいと香りが特徴。紫玉は更にそれよりも優れた品種であり、巨峰の良いところを引き出したものである。外観は巨峰そのもので見分けるのは難しいが、やや濃い紫色をしている。
1粒のサイズは12㌘から16㌘。糖度は20度に達するものもある。果皮は分厚いが剥きやすい。果汁が多く甘味も強いため、ぶどうそのものの旨味が凝縮されている印象。肉質は巨峰よりやや硬め。1房あたりの大きさは500㌘程度。
巨峰より10日から15日程度早く収穫されることから、巨峰から生まれた早熟(早生)品種としても知られる。価格は1㌔1200円~2000円程度で、巨峰と同程度かやや高め。
農水省統計(2020年)によると、全国の栽培面積は26・9㌶。第1位は山梨県(9・2㌶)、第2位は兵庫県(7・2㌶)、第3位は愛知県(3・4㌶)。和歌山県は第8位(1㌶)となっており、僅かではあるが県内でも栽培されている。筆者は、かつらぎ町内の産直市場で購入。やや小ぶりではあるが、しっかりとした濃い紫色に食欲をそそられた。
収穫時期は8月上旬から9月中旬まで。前号で取り上げた藤稔よりも更に希少な品種。1粒に凝縮された甘味と風味を味わっていただきたい。
(次田尚弘/和歌山市)