119番でスマホ活用 指令センターが試験導入

119番通報の際、現場の状況をより正確に把握し、効果的な救命対応などを図るため、和歌山広域消防指令センター(和歌山市八番丁)は9日、スマートフォンを活用した119番映像通報システム「Live119」の実証実験を、県内の消防で初めて開始した。通報を受けた指令員は、通報者のスマホから現場の映像をリアルタイムで見て、的確な指示や救命法の解説動画の送信などが可能になり、救命率の向上や迅速な対応につながると期待される。

同センターは同市、岩出市、紀の川市、海南市、紀美野町からの通報を受けている。9日以降、通報を受けた指令員が、現場映像の確認が必要と判断した場合、通報者にシステムを利用した映像伝達の協力を依頼。データ使用量(1分間に約30MB)が通報者負担であることなどに通報者が承諾すると、指令員が通報者のスマホに、システム使用のためのURLを送付する。

同センターでは、成人用と幼乳児用の心肺蘇生法や背部叩打法、AED(自動体外式除細動器)使用方法など計6の動画を用意しており、通報者に送信することも可能。通報者はスマホのビデオカメラ機能を使い、現場の映像を指令員と共有しつつ、救命活動をする人に動画を見せて説明することができる。

システムは、火災や事故、災害現場などでの映像共有に使用される。同センターはことし4月からシステムの一部を使用し、現場の消防隊員が大雨時の災害状況や火災発生時のドローンからの映像をリアルタイムで指令室と共有するなど、消防職員間のシステム活用・理解も進めてきた。

実証実験の開始を前に8日、同センターでシステムの実演があった。和歌山市消防局指令課情報管理担当の平松晃消防司令補(37)が指令員役となり、心肺蘇生が必要な現場を想定しデモンストレーションを行った。

平松消防司令補は通報者役のスマホを通して、救命活動実施者役に、心肺蘇生法実施経験の有無を尋ね、経験がないことを確認した上で、通報者役に解説動画を送信。救命活動実施者役は、平松消防司令補から「映像は見えていますか」や、「約5㌢以上押すように、しっかりと深く押して」などの指示を受けながら、心肺蘇生を行った。

実演を終えて平松消防司令補は、パニック状態の通報者によるスマホ操作や、撮影に集中し過ぎることによる二次被害などが懸念点とし、電話対応へ切り替える判断なども重要と強調。「人命や、消防隊の部隊運用に直結する非常に効果的なシステム。指令員から依頼があった際は、ご協力をお願いします」と呼びかけた。

現在、同センターでは、同システムを導入したパソコン2台を所有し、常時8人の指令員が対応可能。2025年3月31日までの実証実験の中でマニュアル作成などに取り組み、同4月1日からの本格導入を予定している。同システムはことし8月末時点で、全国81の消防本部で本格導入されているという。

デモンストレーションで、映像を確認して指示を出す平松消防司令補

デモンストレーションで、映像を確認して指示を出す平松消防司令補