心疾患の高度医療推進 県立医大が新センター
心臓疾患の治療を強化するため、和歌山県立医科大学(和歌山市)は今月1日、付属病院に「心臓血管病センター」を新設した。より高度で先進的な医療を充実させ、地域医療機関とのネットワーク整備、専門的人材の育成などを目指していく。
同院では10年ほど前から、循環器内科や心臓血管外科などが連携して30人程度の「ハートチーム」をつくり、患者ごとに最適な方法を検討しながら治療に当たる取り組みを進め、提供する医療の質、量ともに大幅に向上。現在、県内で同院のみが提供している心臓・血管関連の高度先進医療は29種類で、このうち最近2年間に導入したものが24種類と進歩は目覚ましい。
特に、カテーテルを使用した患者の体への負担が小さい治療法が進み、狭くなった心臓の冠動脈を広げて血流を確保する手術、不整脈の治療などの件数は、コロナ禍の影響で全国的には減少する中、同院では増加傾向が継続。大動脈弁狭窄症のカテーテル治療では、2021、22年の2年続けて国立循環器病研究センターの症例数を上回る実績となっている。
県内の人口10万人当たりの心疾患死亡者数は、19年は248・1人で全国ワースト1位だったのが、21年には229・3人でワースト8位まで改善し、高度医療の提供を推進してきた成果が表れている。
心臓血管病センターでは今後、血栓の移動による脳梗塞の発症を予防するための不整脈のカテーテル治療をはじめ、新たな高度先進医療の導入を予定。県内医療機関と循環器救急診療のネットワークを整備することで、県民が高度先進医療をより受けやすくする体制づくりも進める。センターの活動を維持、発展させるための人材育成、新たな技術の開発、研究なども行う。
14日、センター長に就任した西村好晴教授(心臓血管外科)、副センター長の田中篤教授(循環器内科)らが記者会見。
田中副センター長は「高度先進医療ができる人、できる環境の両方がそろい、ここ2年で花開いてきた。センターではもっと深い、先の取り組みをしたい」と意欲を語り、西村センター長は「県は心疾患の死亡率がまだ高い状況にある。県民の命を守ることが私たちの一番の責任であり、センターとして尽力していきたい」と話した。