味村さんら4人・1団体 和歌山市文化表彰
和歌山市の文化向上、発展に功績のある個人・団体に贈られる2023年度市文化表彰の受賞者が決まった。「文化賞」にフランス料理シェフの味村正弘さん(71)、「文化功労賞」に指揮者の江田司さん(70)、城郭研究者の水島大二さん(76)、「文化奨励賞」に声楽家の久保美雪さん(50)、和歌山市民オペラ協会(多田佳世子代表)の4人と1団体が選ばれた。
味村さんは日高川町出身。10代半ばから料理の道に進み、大阪や広島などで研さんを積んだ後、和歌山市内のホテルの総料理長を経て1994年に独立した。
伝統的なフランス料理を大切にしつつも新たな味を求めて料理の腕を磨き、食文化の継承と後進の育成にも尽力。県調理師会会長として、県の食育推進事業「キッズシェフ体験」や「わかやまジビエ出前授業」を通して、県内の児童・生徒に対し、調理技術の習得や地域農業への理解促進の活動も続けている。
88年の世界料理オリンピックで金メダルをはじめ、国際的な料理の祭典での受賞も多数。2005年度きのくに技能奨励賞、21年「卓越した技能者(現代の名工)」厚生労働大臣表彰など数々の表彰に輝いている。
江田さんは和歌山市出身。和歌山大学教育学部卒、大阪教育大学大学院修了。1974年、和歌山市交響楽団の創団にチェロ奏者として参加し、翌年から指揮を兼任。現在も音楽監督・常任指揮者を務める。指揮者として、古典派から近現代まで幅広いレパートリーを持ち、交響曲など器楽曲の他、宗教曲、團伊玖磨「夕鶴」などのオペラ、バレエ作品の上演も手掛けてきた。
指揮者としての活動に加え、小学校音楽専科の教員を36年間務め、和歌山大学教育学部非常勤講師、名古屋学院大学教授として音楽教育に携わり、音楽教科書「小学生の音楽1~6年」の執筆者にも名を連ねている。
水島さんは海南市出身。中学時代に城に関心を持ち、大東文化大学進学後、日本城郭協会、日本城郭協会学生研究会に所属し、本格的に研究を始めた。卒業後は県立高校教諭の傍ら、県内の中世城館跡を調査し、83年に県教育委員会から県高校教育研究奨励賞を受けている。
89年、和歌山城郭調査研究会を立ち上げ、調査研究を進めるとともに、和歌山市と連携して92年から3年かけて和歌山城の石垣の刻印を調査。約140種、2000個の刻印の存在を確認した。
教職を退いた後も調査活動、成果を広く一般に伝える活動に取り組んでいる。著書に『ふるさと和歌山城』など。
久保さんは和歌山市出身。高校時代に声楽を志し、大阪音楽大学に進学。09、12、19年にソロリサイタルを開き、モーツァルト室内管弦楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団などと共演してきた。
和歌山市民オペラ協会の公演に長く携わり、同協会が「第20回佐川吉男音楽賞」を受賞した作品「稲むらの火の物語―梧陵と海舟」にも出演。県内の学校で児童・生徒に芸術鑑賞・体験の機会を提供するなどの活動も続けている。
和歌山市民オペラ協会は93年、「和歌山ふるさとオペラ」として発足。97年に現在の団体名に改称。95年以来、ことしの創立30周年記念公演「清姫―渡し場の段―」まで26回の定期公演を重ね、市の舞台芸術をけん引し続けている。演目は、日本の古典を題材とする作品、和歌山にこだわった作品も数多く手掛ける。子どもたちがオペラを体験するワークショップの開催など、オペラを通した社会貢献、後進の育成に取り組んでいる。
市文化表彰は1982年度から実施しており、42回目。受賞者は今回を含めて154人、31団体。
表彰式は20日、和歌山城ホールで行われ、受賞者に表彰状と徽章(団体は盾)、副賞が贈られる。