田中鮎美トリオ凱旋公演 和歌山城ホールで

和歌山市出身、ノルウェー在住で、北欧のジャズシーンで活躍するピアニスト、作曲家の田中鮎美さんをリーダーとする「田中鮎美トリオ」の演奏会が25日午後7時から、和歌山市七番丁の和歌山城ホール3階で開かれる。ドイツの名門レーベル・ECMからアルバムをリリース後、初となる故郷での凱旋公演。静寂と音が織りなし、聴衆を含むその場の空間で生み出される即興性を重視した、独自の音楽世界を和歌山で体感できる。和歌山音楽愛好会フォルテ主催。

田中さんは3歳から県立星林高校を卒業するまでエレクトーンを学び、大学時代にピアノに転向。自分の世界を広げたいとの思いが強くなる中、即興演奏に魅力を感じ、ジャンルの垣根を越え、自由な表現にあふれた北欧のジャズに出合う。「ここなら自分らしくいられる」と感じ、2011年8月にノルウェーに渡り、オスロの国立音楽院ジャズ・即興音楽科で学士号、修士号を取得。ウクライナ出身の作曲家、ピアニストで、ECMから多数のアルバムをリリースした故ミシャ・アルぺリンに師事し、大きな影響を受けた。

13年、若手ベーシストのクリスティアン・メオス・スヴェンセンさん、ノルウェーのグラミー賞といわれるスペッレマン賞を6回受賞しているドラマーのペール・オッドヴァール・ヨハンセンさんと共に田中鮎美トリオを結成。21年10月、ECMからトリオによる「スベイクエアス・サイレンス-水響く-」を発表。ECMからジャズのリーダー作品をリリースした3人目の日本人アーティストとなった。

同アルバム誕生の背景には、幼い頃から親しんだ和歌山の海があるという。田中さんは「泳ぐ時に体験する水の中の静寂は、ただ静かなだけではなくて、いろんな生命のエネルギーを見に行っているよう。そういうものを子どもの頃から肌で感じて生きてきたというイメージが自分の中にあります」と話し、その感覚を音楽で表現しようと作曲した作品が、同アルバムには収録されている。

コロナ禍を経て2年3カ月ごしに実現する故郷での公演では、同アルバムの収録作品を中心としつつも、作曲60%、即興演奏40%ぐらいになりそうという。「そこに生まれるものに耳を傾けて、そこから作っていくというのが即興演奏の魅力です」と田中さん。「繊細に相手の音を聴いて柔軟に変容し、エゴがなく、音楽が必要としている音を身を通して出しています」と心からの信頼を寄せるスヴェンセンさん、ヨハンセンさんとのトリオから、当日の会場でどんな音楽が生まれてくるのか。

聴衆にとっても、会場で音に耳を澄ますことにより、自分の中にある何かに通じる感覚が生まれたり、音と音の間の空間があることによって多様な違った感じ方が出てきたり、「マインドフルネス(今ここで起こっているものごとに集中する状態)な体験をする時間を、コンサートで過ごしていただけると思います」と、来場を呼びかける。

チケットは前売り(予約)3500円、当日4000円、大学生以下2000円。取り扱いは和歌山音楽愛好会フォルテ(℡073・422・4225、メールfortewma@amber.plala.or.jp)の他、県民文化会館、和歌山城ホール、LURUMUSIC。問い合わせもフォルテ。

田中鮎美トリオ ⒸPernille Sandberg

田中鮎美トリオ ⒸPernille Sandberg