多様なレパートリーを持つ「文旦」

前号から、目を見張る大きさが特徴で、長い歴史を持つ「文旦(ぶんたん)」を取り上げている。果汁が多く、実の一粒ずつがプリプリしており、酸っぱさが少ないがゆえに、さまざまな味わい方がある。サイズが大きいため、むき方にも工夫が必要で、奥が深いといえるかんきつ。今週は文旦の魅力を深掘りしたい。
むき方は次の通り。ハッサクのように手でむくことは難しいため、ヘタが横にくるようにして置き、まずは、包丁で縦に浅い切り込みを入れながら一周する。次に、切り込みにスプーンを差し込み、力を入れながら文旦を回し、果実と皮を離脱させる。そして、果実を手でひねるようにして外に取り出す。最後に1房ずつ薄皮をむき、果実が取り外されてできた、文旦の半分を器にして、むいた果実を盛り付ければ出来上がり。これが一般的な文旦のむき方である。
薄皮をむいたプリプリの果実をそのまま食する方法もあれば、さまざまな形に調理して、さらにその味わいを楽しむことができる。例えば、皮と果実を使って作る、ほろ苦さが特徴の「文旦ジャム」。皮のほろ苦さと砂糖の甘さのバランスを楽しめる「文旦ピール」は、お酒のつまみとしても。
文旦の一種で、以前、このコーナーでも取り上げた「晩白柚(ばんぺいゆ)」は、文旦の中でも最もサイズが大きい品種。一般的に「わた」と呼ばれる分厚くて白い部分を使った「わたの砂糖漬け」は甘党の方に支持される逸品。さっぱりとした甘味を生かし、ジェラートやタルト、プリンとして食することもでき、そのレパートリーは幅広い。
文旦は100㌘あたりのビタミンCの含有量が高く、風邪の予防や免疫力の強化にも有効とされる。この時期に持ってこいのかんきつをぜひ味わってみては。(次田尚弘/和歌山市)