災害に備える弁当開発 近大中1年と信濃路
近畿大学付属和歌山中学校(和歌山市善明寺)の1年1組が、和食専門店を展開する㈱信濃路(同市松島)と共同で開発に取り組んだコラボレーション弁当「わかやま丸ごと弁当」が完成した。災害に備えて長期保存でき、観光で役立つ土産となることなどを目指し、生徒のアイデアやデザインを同社が実現した。
来年開催の大阪・関西万博に向け、本年度から3年がかりで取り組みをしようと、総合的な学習の時間の一環として企画。1年生の取り組みのテーマ「観光」から1組の32人は、観光に役立つとともに、南海トラフ巨大地震などの災害に備え、「もしも私たちが非常食を開発したら」を弁当づくりのテーマに掲げた。
開発のコンセプトとして、長期保存ができ、身近なところに販売して防災意識を高められること、万博や和歌山観光の土産として販売できること、心にしみわたる温かい弁当とすることなどにこだわった。
生徒たちは、県の特産物を使った和食をメインとした具材を用いる方針や、メニューの具体的な内容、パッケージのデザインなどを授業で話し合い、提案。同社は生徒たちの企画を形にするために全面協力した。
非常食にもなるよう、マイナス30度で冷凍する急速凍結機を使用し、温めたら出来たての味が再現でき、食感が損なわれず、彩りの良いものにするため、具材を考えた。
メニューは、熊野牛とうめ豚を使い、デミグラスソースで味わう煮込みハンバーグをメインとし、全8種に決定。「鯛めし」や「肉じゃが」「だしまき」「人参ツナシリシリ」など、子どもから大人まで食べやすい料理がそろっている。ハンバーグは、解凍時間で他のおかずとの差ができないよう、小さめの二つに分けるなど工夫した。
パッケージは、オレンジ色をベースに鯛やパンダ、梅干しなど、県を代表する名物のイラストをデザインし、災害用伝言ダイヤル「171」も表示している。
「わかやま丸ごと弁当」のお披露目と試食会が26日、同社本部で開かれ、1組を代表して7人の生徒が参加。急速凍結機などを使用する工程を見学した後、開発の経緯などを発表した。
完成した弁当が運ばれ、試食した生徒たちは「小学生の頃みんなに人気だった人参シリシリを提案した。採用されてうれしい」、「一度冷凍したとは思えないやわらかさ、おいしさで感動した」、「肉じゃががやわらかくて、お年寄りでも食べやすいと思う」などと話し、完成を喜び合った。
大浦寛都さん(13)は「みんなで協力して楽しくできた。被災地などでも、子どもや高齢者にもおいしく食べてもらえるのでは」、同社の冷水康浩社長は「心が温かくなる弁当の開発ということで、お役に立ちたかった。私たちも和歌山の食材を再認識する良いきっかけになった」と話していた。
同弁当の販売予定はないが、災害が発生した場合に提供できるよう、レシピを保存する。