カイロス打ち上げ延期 「次こそは」
宇宙事業会社、㈱スペースワンの小型ロケット「カイロス」の初号機は9日、和歌山県串本町の「スペースポート紀伊」で発射予定時刻を迎えたが、急きょ打ち上げの延期が発表された。近隣2カ所の見学場に集まった約5000人をはじめ、各地で世紀の瞬間を見守った人々には落胆も見られたが、次こそは和歌山を舞台とする宇宙事業新時代の幕開けを見たいとの期待が聞かれた。
スペースポート紀伊では9日、天候判断、機器・設備の起動、安全確認と打ち上げ準備が進められ、直前まで午前11時1分12秒の予定時刻に発射するとされていた。午後0時25分ごろ、報道陣の取材に応じた岸本周平知事は、規制された海域に船舶が侵入したため、安全面から延期となったとスペースワン社から説明を受けたことを明らかにした。
射場から東西に約2㌔、田原海水浴場(串本町)と旧浦神小学校(那智勝浦町)の2カ所に設けられた見学場では県内外からの来場者が発射を待ちわび、周辺の施設や道路も大混雑となった。
田原海水浴場では、砂浜近くの芝生にステージとスクリーンが設置され、ロケット関連グッズなどを販売する出店には早くも午前7時ごろから列ができ、大にぎわい。ステージでは専門家による事前解説やトークショーなどが行われ、打ち上げ予定時間が近づくほどに会場の雰囲気は高揚していった。
ついにスクリーンにロケット射場の映像が映し出され、カウントダウンが始まったが、予定時刻が過ぎても中継映像のカイロスは動かず、16分後に延期することが伝えられたが、再びのカウントダウンで11時17分12秒を迎えても打ち上げは行われず、時期未定の延期が発表された。
会場からは「え~」「残念」などの声があちこちで聞こえたが、次への期待を込めた拍手が起きた。打ち上げ失敗ではなかったこともあり、大阪府茨木市の小学4年の男子児童(10)は「大好きなロケットが飛ぶイメージはできた。きょうは残念だったけど、次も和歌山に来て打ち上げを見たい」と話すなど、前向きに受け止める人も少なくなかった。
岸本知事は「ロケットの不具合という理由での延期ではないというのは大変心強く思う。産みの苦しみということもある。この延期をスタートの日と捉えて、発射日の発表を待ちたい」と述べ、田嶋勝正串本町長は「どれだけでも待ちます」とした上で、「初号機は早く打ってほしい。まず一発打ってくれたら、雰囲気も変わるんじゃないか」と早期の打ち上げに期待し、見学者などの受け入れ態勢を検証し、改善したい考えを示した。