中米の民族衣装描く すけのさん3作目絵本
和歌山県海南市の絵本作家、すけのあずささん(37)が、3作目となる絵本『みずうみ色のウィピル』をBL出版㈱から出版した。10年前、すけのさん夫妻が世界一周旅行中に訪れた中米グアテマラの民族衣装「ウィピル」に魅了され、生まれた物語。湖やウィピルの色の移り変わりが鮮やかで美しく、人に対する思いやりや愛情が伝わる心温まるファンタジーとなっている。
すけのさんは大阪府出身。京都精華大学芸術学部マンガ学科を卒業後は、似顔絵や挿絵を中心に手掛けるなど活動。2020年、第21回ピンポイント絵本コンペで1冊目の絵本の元となる『うみのハナ』で最優秀賞を受けた。
「次世代につなげていく」を軸に絵本を描き、デビュー作『うみのハナ』は、和歌山市雑賀崎に伝わる彼岸の中日に夕日が海に沈む時に花が降るように見える現象「ハナフリ」を見る風習を題材にした。
2冊目の『やぎのタミエはおかあさん』は、すけのさんが約10年、紀美野町で暮らして経験した、子ヤギの命のたくましさと、出産を見守る姉妹の成長を描いた一冊。
すけのさんは中米を旅していた時、世界一美しいといわれるアティトラン湖の周囲にある村、サンタ・カタリーナ・パロポで暮らす女性たちが着ていた青色のウィピルを目にした。湖と青のウィピルが織り成す光景に「こんなに美しい世界があるのか」と感動。いつかこの湖と民族衣装を描きたいとの思いを持ったという。
ウィピルは、古代マヤ時代から、母から娘へ受け継がれる織物のことで、村により色や柄が異なり、地域の伝承や物語が織り込まれているのが特徴。
すけのさんは自由を意味するちょうちょや、女性の病気を治す意味のある雷などの模様があると話し、絵本では、神様を表す雷や水瓶、ヘビなどの柄を盛り込んだ幾何学模様のウィピルを描いた。
物語は、母から機織りを教わり、見事なウィピルが織れるようになったラサが主人公。赤色が主流だったウィピルが、青色に変わるきっかけをラサの心の変化と重ねた民話風の話。ウィピルの赤から青に変わるグラデーションや細かな模様などが魅力的に描かれ、天気や感情を反映する湖の色合いなど、どれも鮮やかで美しい。人々の暮らしや文化も知ることができる。
すけのさんは「色がきれいだなとか、夕日見てみたいなとか好きなように読んでもらえたら。マヤの時代から受け継がれてきている思いや文化などに思いをはせ、物事を深く知るきっかけになれば」と話している。
絵本は、1760円。ツタヤガーデンパーク和歌山店、ツタヤ海南店、くまざわ書店和歌山Mio店などで購入できる。
海南市船尾の旧田島うるし工場内のオールドファクトリーブックスで原画展も開催。2日~12日(5、7、8日休廊)の午前10時~午後5時。問い合わせは同店(℡090・5891・9092)。