地下水浄化し医療継続 ろうさい病院に新設備

和歌山ろうさい病院(和歌山市木ノ本、南條輝志男病院長)に「地下水汲み上げ浄化センター」が完成し、7日に竣工式が行われた。大規模災害などで断水が発生した場合に自給できる水量が大きく増加し、非常時も通常の医療を継続して提供し、近隣住民の安心安全につながる新設備となっている。

同センター設置のきっかけは、2021年10月に六十谷水管橋が崩落し、和歌山市の紀の川以北ほぼ全域が約1週間にわたり断水となったこと。

同センターは井戸から汲み上げた地下水をろ過し、隣接の貯水槽にため、断水時には同病院の各棟に供給する。給水量は、従来設備の一日約30㌧から4倍の120㌧以上に飛躍的に増え、不純物の除去率が高いRO(逆浸透)膜を使用し、飲料水としても利用できる。

整備に当たっては国、県と協議し、「災害時拠点強靭化緊急促進事業補助金」を活用。総工費約1億4000万円をかけ、監理コンサルタントを㈱岡本設計(同市土佐町)、施工を㈱小向商会(同市小松原通)が手掛け、ことし1月に着工、3月に完成した。

竣工式には岸本周平知事や尾花正啓市長、県議、市議、医療関係者ら約50人が出席した。

南條病院長はあいさつで、市民の約40%が暮らす紀の川以北唯一の災害拠点病院として、災害対応能力を強化してきた取り組みを紹介。

DMAT(災害派遣医療チーム)の待機スペースや災害医療の訓練ができるスキルスラボなどを備えた「災害医療研修棟」、非常用の自家発電能力を倍増させ、より多くの負傷者を受け入れられるスペースなどを確保した「災害医療対応棟」に続き、「3本目の防災の柱が出来上がった」と意義を強調し、「最も重要な給水が確保できたことは、この病院にとってのみならず、地域住民の皆さまにも安心・安全を供給できるものと確信している」と話した。

岸本知事、尾花市長ら来賓の祝辞に続き、南條病院長が岡本設計の岡本政仁会長、小向商会の小向俊和社長に感謝状を贈呈。テープカットが行われ、会場は完成を祝う拍手に包まれた。

「地下水汲み上げ浄化センター」の竣工をテープカットで祝う南條病院長㊥ら

「地下水汲み上げ浄化センター」の竣工をテープカットで祝う南條病院長㊥ら