「手話は言語」広めよう 全国ろうあ者大会
聴覚障害者の社会的地位や福祉の向上を目指す「第72回全国ろうあ者大会」(全日本ろうあ連盟主催)が、6日から9日にかけて和歌山市で開かれ、全国から聴覚障害者や手話関係者ら約2500人が参加。仲間との再会を喜び合い、社会に手話言語の輪が広がるよう思いを一つにした。
文化芸術活動など日頃の活動を紹介することで、社会への理解を促進することなどが目的。全国持ち回りで実施される大会で、県内での開催は31年ぶり。
県では、2017年に手話言語条例を制定。各市町村でも制定され、手話言語に関する条例制定率が全国トップであることを受け、大会スローガンを「手話の輪を 連れもて広めよら 紀の国から」とした。
9日に和歌山ビッグホエールで行われた式典では、大会実行委員長を務める県聴覚障害者協会の福田美枝子会長が「いつでも、どこでも、どんな時でも手話言語が保障されるよう、県内の残り2町でも手話言語条例を制定し、100%達成を目指したい。県民や国民に、『手話は言語』として正しい認知を広めていきたい」とあいさつ。県内では、ろうあ重複障害者や高齢者の福祉事業所や介護事業所、老人ホームを立ち上げて運営していることを紹介し、全国にも手話言語によるコミュニティーが広がることを願った。
今大会をもって理事長を退任する全日本ろうあ連盟の石野富志三郎理事長は、務めた15年間の活動を振り返り周囲の支えに感謝。「来年のデフリンピックの成功と手話施策推進法の制定に向けて見守っていきたい」とあいさつ。岸本周平知事は手話で歓迎し、「障害のある人もない人も、チャレンジドとして共に仲良く暮らしていける和歌山県をつくっていきたい」と述べた。
アトラクションでは、同市の木ノ本の獅子舞保存会が、県の無形民俗文化財に指定されている「木ノ本の獅子舞」を披露。和歌山ろう学校の児童や生徒が、「ろうあるある」と題して寸劇を発表し、手話で校歌を歌った。
また、手話に興味がある、よしもと芸人で立ち上げた「よしもと手話ブ!」の3人が、声と手話によるお笑いライブで沸かせた。
式典に先立ち、講演会や研究分科会、交流会などが開かれた他、聞こえる人も聞こえない人も楽しめる手話劇の上演もあった。
大会実行委員会の櫻井貴浩事務局長(51)は「今回、聞こえない人が中心となって大会を成功できたことは大変喜ばしいこと。大会をきっかけに、障害の有無にかかわらず、音声言語でも、手話言語でも、さらに意思の疎通やコミュニケーションが深まるような社会の実現に一歩でも近付けば」と願っていた。