和歌山ふぉんと完成 障害者が絵柄考案
障害のある人が描いた絵や文字をデザイナーがデータ化し、個人や企業に活用してもらう「ご当地フォント」。全国に広がっている取り組みで、和歌山県内でも「和歌山ふぉんと」が誕生した。インターネットでデータ販売も始まり、県内のイベントで使用される予定。データ化に携わった同市のデザイナー、吉岡理恵さんは「今後は学生とも連携し、パブリックデータとして多くの人や企業、行政に使ってもらい、県全体のデザインレベルを上げたい」と話している。
障害のある人、デザイナー、障害者支援事業所による共同の取り組みで、東京都渋谷区の「シブヤフォント」が発祥。「フォント」と「パターン」があり、障害者たちが表現する文字や絵を鑑賞だけで終わらせず、商品デザインなどに使いやすいようにデザイナーが大きさや配置、色、並びなどを加工しデータ化。個性あふれ、地域らしさが表現されたものもある。
和歌山マリーナシティで開かれる光の祭典「フェスタルーチェ」のデザイナーでもある吉岡さんは、自分たちのまちにも取り入れたいと昨年6月、同市で主に知的障害者たちの生活・就労支援を行う、社会福祉法人つわぶき会に協力を呼びかけ、実行委員会を立ち上げた。吉岡さんは福祉系の短大を卒業。デザイナーとなっても「デザインを通して介護や障害のある人と関われることをずっと探してきた」という。
同会の施設で絵画教室に通う約20人の利用者にワークショップを開催。アルファベットと好きな絵を描いてもらい、吉岡さんらは五つのフォントと12のパターンを完成させた。
アルファベットや数字、記号をクレヨンで表現した味わいのあるフォントをはじめ、和歌山らしさが伝わるパンダがぎっしり並ぶ「無限パンダ」、いつも色鮮やかな神様を描く利用者の絵を、デザイナーが部分的に切り貼りし、柔らかな印象に仕上げた「神様柄」などがある。
昨年11月に初めて実用化。JR和歌山駅周辺のけやき大通りを光で彩る「けやきライトパレード」では、和歌山ふぉんとを取り入れた10種類、66枚のフラッグが飾られ、ことしの同イベントでの採用も決まった。
デザインを考えた障害者たちの反応はさまざまで、支援する職員からは「日の目を浴びづらい利用者の絵が堂々と世に出ることで、施設の雰囲気が良くなる。この業界のイメージがより明るくなれば」と期待の声が上がっているという。
吉岡さんは「(利用者の絵には)パワーとインパクト、画力、私たちが思いつかないような発想があり、わくわくする」と話す。
和歌山ふぉんとの利益は、障害者や事業者に還元し、障害者の経済的自立を支援する活動に充てられるという。購入、詳細はウェブサイトから。
発起人の福島さん迎え 26日 ビッグ愛で講演会
実行委は26日午後3時から5時まで、同市手平の和歌山ビッグ愛9階、県ジェンダー平等推進センター“りぃぶる”で講演会を開く。
吉岡さんが和歌山ふぉんとを説明し、「ご当地フォント」発起人でデザイナー福島治さんによる講演と他県の活動紹介、個別相談もある。
参加無料。事前申し込みが必要で先着50人。
申し込みは電話でつわぶき会(℡073・431・7000)か、実行委へメール(wakayamafont@gmail.com)、グーグルフォームから。